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静岡地方裁判所 昭和35年(行)2号 判決 1976年10月26日

原告 梅軒酒造株式会社

被告 島田税務署長

訴訟代理人 岩渕正紀 杉山昇 三谷和久 真庭博 ほか四名

主文

原告栗林藤蔵、同鈴木忠次郎、同竹中寛、同谷崎吉太郎、同相川龍蔵、同萩原平吉、同谷崎吉揮および同池守儀信の各訴えならびに原告梅軒酒造株式会社の請求の趣旨二の訴えをいずれも却下する。

被告が原告梅軒酒造株式会社に対し昭和三四年七月二九日付で通知した酒税調査決定のうち別紙酒税調査決定目録(二)記載の部分ならびに同日一一時三〇分付で告知した酒税本税額一、八八二万三、一八〇円につき納期限を同日一二時三〇分とする納税告知のうち酒税本税額一、五二一万八、六二〇円を超える金額を定めた部分を取消す。原告梅軒酒造株式会社のその余の請求の趣旨一の1の請求を棄却する。

訴訟費用のうち、原告栗林藤蔵、同鈴木忠次郎、同竹中寛、同谷崎吉太郎、同相川龍蔵、同萩原平吉、同谷崎吉揮および同池守儀信と被告との間に生じた分については、全部これを右原告らの負担とし、原告梅軒酒造株式会社と被告との間に生じた分については、これを五分し、その四を同原告の、その余を被告の各負担とする。

事実

第一請求の趣旨

一  被告が

1  原告梅軒酒造株式会社に対し、

(一) 昭和三四年七月二九日付で通知した酒税調査決定

(二) 同日一一時三〇分付で告知した酒税本税額一、八八二万三、一八〇円につき納期限を同日一二時三〇分とする納税告知

2  原告萩原平吉・同谷崎吉揮・同池守儀信に対し、昭和三四年九月二一日付で各通知した、右各原告をそれぞれ梅軒酒造株式会社(以下「梅軒」という。)との連帯納税義務者として、梅軒より追徴すべき酒税一、八四六万四、二八一円およびその利子税三八三万九、四九一円ならびに滞納処分費二五八円合計二、二三〇万四、〇三〇円のうち、原告萩原平吉につき二万〇、五七〇円・同谷崎吉揮につき一三万九、三一五円・同池守儀信につき三七万四、〇〇〇円をそれぞれ昭和三四年一〇月二日の納付期限までに納付すべき旨の各納付通知

3  原告栗林藤蔵・同鈴木忠次郎に対し昭和三四年七月三一日付で、原告竹中寛・同谷崎吉太郎・同相川龍蔵に対し同年八月一日付で各通知した、右各原告をそれぞれ梅軒の納付すべき酒税一、八八二万三、一八〇円およびその利子税三七二万六、八八六円合計二、二五五万〇、〇四六円のうち七四八万円についての連帯納税義務者として、右義務額を原告栗林藤蔵につき昭和三四年七月三一日午後二時四〇分・同鈴木忠次郎につき同日午後一時四五分・同竹中寛・同谷崎吉太郎につき各同年八月三日午前一〇時・同相川龍蔵につき同月五日の各納付期限までに納付すべき旨の各納付通知

4  右3の各納付通知にもとづき原告栗林藤蔵・同鈴木忠次郎・同竹中寛・同谷崎吉太郎に対し、それぞれ別紙差押処分目録(一)ないし(四)各記載の日時にその各記載の財産につきなした滞納処分は、いずれもこれを取消す。

二  原告梅軒につき前項1の酒税調査決定・納税告知にかかる酒税本税額一、八八二万三、一八〇円の、同萩原平吉につき前項2の納付通知にかかる二万〇、五七〇円の、同谷崎吉揮につき同様一三万九、三一五円の、同池守儀信につき同様三七万四、〇〇〇円の、同栗林藤蔵・同鈴木忠次郎・同竹中寛・同谷崎吉太郎・同相川龍蔵の各人につき前項3の各納付通知にかかる七四八万円の各納付義務が存在しないことを確認する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

第二請求の趣旨に対する答弁

一  本案前の答弁

請求の趣旨一の2および4ならびに二の訴えを却下する。

本案前の答弁の理由

1  請求の趣旨一の2の請求について

本請求は、国税徴収法(明治三〇年法律第二一号、以下「旧国税徴収法」という。)三一条ノ三第一項所定の審査請求の手続を経ることなく提起されたものであり、同法三一条ノ四第一項に違反する不適法な訴えである。

2  請求の趣旨一の4の請求について

(1) 原告栗林に帰属する財産に対して行つた別紙差押処分目録(一)記載の各差押処分中、昭和三四年八月三日差押えにかかる不動産のうち符号一の8.10.18.19.20.34.の土地以外の不動産、有体動産、債権についての差押処分は、左記のとおり既に差押が解除され、あるいは債権の取立てが完了しているから、当該財産に対する差押処分の取消しを求める訴えは不適法である。

また、前記符号の土地を含む昭和三四年八月三日付不動産の差押処分に対しては、旧国税徴収法三一条ノ二に規定する再調査の請求および同法三一条ノ三に規定する審査の請求手続を経た事実はないから、前記符号の土地に対する差押処分の取消しを求める本請求は同法三一条ノ四第一項に違反し不適法である。

記<省略>

(2) 原告鈴木に帰属する財産に対して行つた別紙差押処分目録(二)記載の各差押処分中、昭和三四年八月四日差押えにかかる不動産のうち符号四の土地を除く不動産、有体動産、債権についての差押処分は、左記のとおり既に差押が解除され、あるいは債権の取立が完了しているから、当該財産に対する差押処分の取消しを求める訴は不適法である。また、前記符号の土地を含む昭和三四年八月四日付不動産の差押処分に対しては、旧国税徴収法三一条ノ二に規定する再調査の請求および同法三一条ノ三に規定する審査の請求手続を経た事実はないから、前記符号の土地に対する差押処分の取消しを求める本請求は同法三一条ノ四第一項に違反し不適法である。

記<省略>

(3) 原告竹中に帰属する財産に対する別紙差押処分目録(三)および原告谷崎(以下「原告谷崎」と表示する場合には、全て原告谷崎吉太郎を指すものとする。)に帰属する財産に対する別紙差押処分目録(四)記載の各差押処分に対しては、旧国税徴収法三一条ノ二に規定する再調査の請求および同法三一条ノ三に規定する審査の請求手続を経た事実がないから、当該処分の取消しを求める本請求は同法三一条ノ四第一項に違反し不適法である。

また、別紙差押処分目録(三)記載の差押処分ならびに別紙差押処分目録(四)記載の各差押処分のうち昭和三四年八月二一日および昭和三五年六月六日執行の差押処分は、旧国税徴収法第三一条に基づき昭和三四年八月四日付で島田税務署長より滞納処分の引継ぎを受けた小松税務署長(別紙差押処分目録(三)の処分)ならびに礪波税務署長(別紙差押処分目録(四)の処分)が執行したものであり、同法施行規則(明治三五年勅令第一三五号)第一六条第三項所定の差押調書謄本は右各税務署長から各原告に送達されている。従つて、右各処分の取消請求の被告適格は右各税務署長にあり、本請求はその適格なき島田税務署長に対してなされた点においても不適法である。

なお、別紙差押処分目録(四)記載の差押処分中、昭和三四年八月三日付差押えの債権(普通預金)についての差押処分は、昭和三四年八月三日第三債務者から任意弁済を受け、取立が完了しているので、この取消しを求める部分の訴えも不適法である。

3  請求の趣旨二の請求について

本請求において原告は、被告島田税務署長に対し、それぞれ納税告知書ならびに納付通知書記載金額の納付義務不存在の確認を求めている。しかし、納税告知書または納付通知書記載金額の納税義務不存在の確認を求める訴えは公法上の権利関係に関するいわゆる当事者訴訟にほかならず、従つて権利帰属主体でない課税処分庁は被告としての当事者適格を有しないものであるところ、本請求は、課税処分庁たる島田税務署長を被告としており、この点において被告を誤つた不適法な訴えとして却下さるべきものである。

二  本案の答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第三原告らの主張

(本案前の答弁の理由に対し)

1  請求の趣旨一の2の請求について

本請求が旧国税徴収法三一条ノ三第一項所定の審査請求手続を経ることなく提起されたものであることは認める。

2  請求の趣旨一の4の請求について

(1) 別紙差押処分目録(一)記載の各差押処分中、昭和三四年八月三日付不動産の差押処分に対し、

(2) 同目録(二)記載の各差押処分中、昭和三四年八月三日付不動産の差押処分に対し、

(3) 同目録(三)および同目録(四)各記載の各差押処分に対し、いずれも旧国税徴収法三一条ノ二所定の再調査請求および同法三一条ノ三所定の審査請求の各手続を経ていないことは認める。

3  原告らが右審査請求手続を経なかつたことについては、左のとおり正当の事由がある。

(1) 被告より酒税調査決定通知書をもつてなされた酒税調査決定は、「梅軒酒造株式会社の酒税法違反嫌疑事件」における犯則行為についての調査決定であるとされていた。

(2) しかし、原告栗林、同鈴木、同竹中、同谷崎ら清算人が就任により清算事務上引継いだ梅軒の酒類の製造および移出に関する帳簿類は、いずれも被告の監督下に作成・備付・使用されていた正規帳簿類ばかりであつて、その記載内容についても被告の常時ないし適時の検閲に通されてきたことにより公信性が強く、右帳簿類のほかに、これに隠された事実があつたというようなことは、清算人らには考えられなかつた。

(3) また、会社解散時には増田与重ら従業員の東京国税局に対する申告と同国税局からの名古屋国税局に対する移牒とによつて同局に梅軒にかかる嫌疑事件が立件されていたようであるが、そのことは解散までの会社役員にも解散後調査決定通知を受けた当時の清算人らにも全く知られていなかつた。

(4) 右嫌疑事件においては、事件調査のある段階で嫌疑者が梅軒から原告谷崎および広瀬新一の両名にすり替えられたうえ、昭和三四年秋ころ名古屋国税局長からの静岡地検に対する両名についての告発により刑事事件とされたが、梅軒については国税犯則取締法一三条の告発も同法一四条の通告処分もなされずに罷み、それ以来清算人らは梅軒にかかる酒税法違反嫌疑事件が一時的にもせよ、また国税局限りにおいてにもせよ立てられたということ自体を知らずに経過した。

(5) 従つて、被告により右嫌疑事件につき犯則調査が行われたなどということも全く知らなかつたのである。また実際にも、被告として右東京および名古屋各国税局で一時的にも梅軒を嫌疑者として行われた犯則調査をもつて自署調査に使用するにしても、梅軒にかかる嫌疑事件そのものが前述のように調査途上で立消えになつた以上、「梅軒の酒税法違反嫌疑事件について調査決定」するにもその拠り所がなかつたはずであり、少くとも梅軒に対する処分の当時には、国税局における事件自体調査に着手したばかりであつて、これにつき「調査決定」を行うということは、被告にとつてはもちろん国税局にとつてさえ不可能であつたはずである。

(6) いずれにせよ清算人らとしては、被告から突如「梅軒の酒税法違反嫌疑事件について調査決定」したと通知されても当時としては何のことか分らず、事件の存在そのものからして何らかの誤解より生じたもので、調査決定も事実無根の瑕疵を帯びた当然無効の処分であると理解していたのである。

(7) 仮に国税局における梅軒にかかる事件のことが清算人らに知られていたとしても、一旦梅軒につき立件・調査された事件に関して告発も通告処分も行われなかつた当時の状況からすれば、事件は少くとも梅軒に関する限り違反なしとの調査結果が出たものと推測するのが通常であり、清算人らとしてもかく推測するのが当然であつたといえよう。

(8) 梅軒に対する処分について清算人らがこのように認識していた以上、梅軒を除くその余の原告らも、被告よりなされた各処分がいずれも事実無根の違法・無効な処分であると理解していたと見るのが正しい。

(9) かかる処分に対する原告らの審査請求に対しては、名古屋国税局長としては、既に自局で梅軒に関し違反なしとの調査結果を出した以上、これと同じ方向で対処すべきであつたのに、不当にも原告らの審査請求をいずれも理由なしとして棄却した。

(10) そこで原告らは、かかる不統一な取扱いをする行政当局の態度に甚だ不信を感じ、爾余の処分に対し審査請求をしてみたところで結果に大差はないと考えて、審査請求を経ずに本訴を提起したのである。

(11) 加えて、原告らのうちの清算人らは、一旦株主に分配した会社の残余財産のことを一日も早く安定させるべき責務を負つていたうえ、分配金が善意に受領した株主によつて消費されないうちに事態の解決を図らないと著しい損害を生ずる虞れが多分にあつたので、これらのことをも考慮して審査請求を経ずに本訴を提起したのである。

(本案に関する主張)

一  原告梅軒は、酒類の製造販売を目的とし、合成清酒および焼酎につき法定の免許を受けてその事業を営んでいたが、昭和三四年五月一五日解散して清算に入り、同年七月二五日の株主総会において残余財産の分配として同日現在原告梅軒に帰属していた現金七四八万円を当時の発行済株式総数四〇万株につき一株当り一八円七〇銭の割合で各株主に分配する旨決議し、同日清算人によりその分配を了した。

二  ところが、その後被告は原告梅軒に対し、「梅軒酒造株式会社の酒税法違反嫌疑事件について調査決定した」ものとして、昭和三四年七月二九日、同日付酒税調査決定通知書をもつて酒税調査決定を通知し、同日午前一一時三〇分付納税告知書をもつて酒税本税額一、八八二万三、一八〇円につき納期限を同日一二時三〇分と指定した納税告知をなしたうえ、昭和三四年七月三一日から昭和三五年六月六日までの間に、解散時の梅軒の株主であつた原告萩原・同谷崎吉揮・同池守の各人に対し、請求の趣旨一の2記載の各納付通知をなし、清算中の梅軒の清算人であつた原告栗林・同鈴木・同竹中・同谷崎・同相川の各人に対し、同一の3記載の各納付通知および同一の4記載の各滞納処分をそれぞれ行つた。

三  しかし、原告梅軒に対する処分には左のような違法がある。

1 原告梅軒に対する酒税調査決定は、単純に酒税法(昭和三七年法律第六七号による改正前のもの。以下同じ。)二五条による調査にもとづいたものではなく、原告梅軒につき、酒税調査決定通知書所掲の犯則行為に関する「酒税法違反嫌疑事件」が存したことならびに右事件において被告により国税犯則取締法上の収税官吏としての調査を兼ねた酒税法二五条による税務署長としての調査が行われたことを前提としているが、右のような「犯則行為」に関し梅軒につき「酒税法違反嫌疑事件」が立件、殊に被告により立件されたことはなく、従つて右事件において被告により調査が行われたこともなかつたのであるから、右酒税調査決定は、その前提となるべき手続を欠くものというべきである。これを詳述すれば、

(一) もし原告梅軒につき「酒税法違反嫌疑事件」やその事件における調査があつたとすると、原告梅軒は法人であるから、居所不分明、逃走の虞れおよび証憑湮滅の虞れはなく、従つて、これに対して収税官吏による国税犯則取締法一三条一項但書の直告発が行われる余地はなく、国税局長または税務署長による同法一四条一項の通告処分または同条二項の直告発が行われるはずであるのに、後者の手続は行われなかつた。

(二) ただ現実の事態として、昭和三四年中に当時原告梅軒の取締役であつた原告谷崎および梅軒の役員でも従業員でもなかつたのに梅軒の総務部長の職名を僣称していた広瀬新一の両名につき、初め梅軒所轄外の東京国税局により酒税法違反嫌疑事件が立件され、これが後に梅軒所轄の名古屋国税局に移牒されて同国税局収税官吏から静岡地方検察庁に両名を犯則嫌疑者とする告発が行われ、これがさらに富山地方検察庁に移送されて同庁検察官により富山地方裁判所に両名が酒税法違反で起訴されたが、同裁判所で両名に対し無罪の判決が言渡され、検察官の控訴を受けた名古屋高等裁判所金沢支部でも控訴棄却の判決がなされ、これが確定したという事実はあつた。しかしながら、

(1) 右事件は、そもそも両名にかかる嫌疑事件としての成り立ちにおいて梅軒所轄外の東京国税局により立件されたことからして異例であつたうえ、会社経営から原告谷崎を駆逐しようと企てた従業員の増田与重・水井喜平・坂本菊松ら労組幹部と梅軒を自己の掌裡または自己主宰の国華酒造株式会社の傘下に収奪しようと試みた矢萩信二郎とが互いに協力して東京国税局の係官に対し多分に私的な請託を行い、元来無実の右両名に対する嫌疑事実を捏造して同係官をして両名にかかる酒税法違反の犯則事件として立件せしめたものである疑いが濃い。

(2) 右事件は、増田らが矢萩の手引きによつて、矢萩懇意の東京国税局係官に対し、増田メモ・坂本日誌等を証拠に原告谷崎および広瀬が梅軒で簿外酒類を造らせてこれを原告谷崎個人または原告谷崎主宰の大洋酒類株式会社(以下「大洋酒類」という。)やその他北陸方面の酒類販売業者にいわゆる簿外出荷した犯則行為の事実があると申告したことに発端したが、もしかかる事実があつたならば、原告谷崎らとしてはその簿外酒類の製造も出荷も梅軒の製造業務関係者であつた坂本や税務事務担当者であつた増田や出荷関係者であつた水井らの協力関与なしにはできなかつたはずであり、そうだとすると、右犯則行為の嫌疑者とさるべき者は第一に右増田らであり、右申告は同人らの自首に該当するものとして同人らも犯則嫌疑者とされなければならなかつたはずであるのに、実際には事件は同人らに対しては立件されず、原告谷崎および広瀬の両名についてのみ立件されたのである。

(3) そして、右無罪に帰結した事件以外には、酒税調査決定通知書所掲の犯則行為に関する嫌疑事件は原告梅軒自体についてはもちろん、原告梅軒の従業員その他自然人についても全く存在しなかつたのである。

(三) とまれ、国税局の収税官吏による原告谷崎および広瀬の両名についての国税犯則取締法上の犯則摘発があつたからといつて、その事件ないしその事件における調査・証憑集取をもつて直ちにーーー事件の移牒または同法一一条二項以下に所定の証憑の引継等の手続を経ないままにーーー被告税務署長による原告梅軒についての「酒税法違反嫌疑事件」ないしその事件における「調査」・「証憑集取」などの手続があつたということはできない。特に本件の場合は、原告梅軒に対する酒税調査決定の当時には、増田メモ・坂本日誌等一切の証憑物件は国税局係官の掌裡にあつたはずであり、被告としてこれにつき調査・証憑集取をなしうる状態にはなかつたはずである。

2 また、原告梅軒には酒税調査決定に所掲の犯則行為はなかつたのであるから、右酒税調査決定は、その前提となるべき実体上の事実をも欠くものというべきである。これを詳述すれば、

(一)被告が本件において、原告梅軒が「昭和三二年二月一六日から昭和三三年六月までの間、簿外原料により簿外に製造した原料アルコールおよびその一部を原料とした合成清酒(二級)等計三九七石八〇升を造り」「昭和酒販株式会社(以下「昭和酒販」という。)に合成清酒(二級)一八石五〇升を、大洋酒類に合成清酒(二級)二五三石六〇升および原料アルコール一二五石七〇升を移出し」、「昭和三二年七月ころから同年一一月ころまでの間、酒類原料用アルコール合計一五六石を谷崎吉太郎に移出し」たものと主張する根拠は、前記原告谷崎および広瀬の両名にかかる酒税法違反事件にあるようである。しかしながら、

(1) 右事件においては、酒類原料用アルコールの簿外製造の事実は、製造原料(生甘藷・乾甘藷・澱粉粕等)の点から消極に認定された。すなわち、検察官主張の製造原料の仕入量または在庫量に沿う証拠はなかつたのである。

(2) 本件においても、被告が主張する製造原料の数量やそれを原料とする簿外の蒸煮・もろみ仕込の回数ないしアルコール効率等はすべて増田メモや坂本日誌によつたかまたはそれをそのまま前提としたかのほかには根拠のない想像量ないし理想値にすぎない。

(3) 蒸煮やもろみ仕込についていえば、梅軒には一日一仕込の設備しかなかつたのは明白な客観的事実であり、所轄税務署長の被告には顕著な事実であつたのに、被告は、「一日三回を上廻る蒸煮がなされた」とか、「これが三回に達する都度もろみ一仕込をした」などと主張するが、そのようなことはもろみ醗酵の所要日数との関係から考えても不可能である。

(4) 前記刑事事件では、昭和酒販および大洋酒類に梅軒から簿外梅類の荷受けをした事実があるか否かについても審理が尽されたが、その事実はいずれも消極に認定された。すなわち、

イ 大洋酒類には同会社およびその代表取締役である原告谷崎らにかかる酒税法違反事件は別にあつたが、その事件の酒類と右刑事事件の酒類とは無関係であつた。

ロ また、広瀬新一は、原告谷崎が原告梅軒の主要株主となりかつ日常の事業資金の融通者になつたのに伴い、原告谷崎から原告梅軒に派遣されて事実上原告梅軒で原告谷崎融通の資金関係の経理監督等の仕事に当つていたと同時に、対外的には原告梅軒の役職員のように振舞つていたことはあつたが、原告梅軒との間に雇傭、委任等の関係があつたわけではなく、また仕事上原告梅軒の酒類製造・移出やそれらについての申告等の実務その他会社業務それ自体に関与していたわけでもなかつた。

(5) 前記刑事事件では、原告谷崎において、昭和三二年中に原告梅軒の当時の工場長であつた沢入龍起から、同人が「不純物が多く臭いも悪い酒」と称した一斗壷入りのもの一三ないし一五・六石(あるいは二〇石)を買受けた事実はあつたとされたが、右「悪い酒」が、果して「酒類原料用アルコール」であつたのか、それとも「フーゼル油など不純物を含有するアルコール」であつたのか、その含有アルコール度数は何度であつたのか、殊にそれが原告梅軒で簿外製造されかつ簿外移出されたものであつたのか、という点については何らの証拠がなく、確実に認められたことは何もなかつたのであるから、本件で被告が、それを「アルコール分含有九六度」の「酒類原料用アルコール」または「フーゼル油など不純物を含有するアルコール」であり、殊に原告梅軒から簿外移出されたものであると主張するのは、被告の独断である。

(6) 仮に前記刑事事件で問題とされた酒税法違反の事実すなわち本件で被告が主張するような犯則事実があつたならば、それに沿う証跡が、例えば、原告梅軒に酒類やアルコールの簿外移出・その製造原料の余分仕入等による金銭の不正規支出の痕跡が、他方で昭和酒販・大洋酒類等の金銭面や得意先面とかに買受けや販売の形跡が残つていなければならないはずであるのに、かかる証跡は、少くとも右刑事事件においてはーーー原告谷崎が買受けたとされるアルコールが原告梅軒から移出されたものであることについての証跡を含めてーーー全く認められなかつたのである。

(7) 特に本件において被告が原告梅軒に対する酒税調査決定の拠り所として提出する増田メモ・坂本日誌等の証拠は、ーーー梅軒に簿外酒類を製造するに足る余分原料の仕入・在庫等が存したことについての証拠をも含めて、ーーー原告谷崎および広瀬にかかる事件において、東京および名古屋各国税局・静岡および富山各地方検察庁・富山地裁および名古屋高裁金沢支部にかけての多年の歳月と多大の調査・捜査・審理の各段階における精査によつても、ついに右両名に犯則行為の存在を認めるに足る証拠とはされなかつたのである。

(8) 従つて、刑事有権判断の帰結として、刑事事件で犯則行為の嫌疑者と目されていた両名についてさえ証拠に採られなかつたほどのものを本件でいくら原告梅軒についての犯則行為存在の証拠であると強調しても、その証拠価値を肯定される理由がないというべきである。

(二) 右刑事事件において原告谷崎および広瀬が無罪とされた理由が、前述のように、原告梅軒の酒類の簿外移出の事実を認めるに足る証拠がない、というのである以上、民事の本件においても同様の判断がなされるのが当然である。

3 以上のとおりであるから、被告の原告梅軒に対する酒税調査決定は違法といわなければならず、これにもとづいてなされた納税告知も違法といわなければならない。

四  右のとおり、原告梅軒に対する処分が違法である以上、その瑕疵はその余の各原告に対する請求の趣旨一の2ないし4記載の各処分にも当然に承継されるから、右各処分もまた違法といわなければならない。

五  なお、被告の原告らに対する本件各処分中左の三処分には、右に述べたほか次のような違法があるので、これも取消しの原因として主張する。

1 原告梅軒に対する納税告知は、昭和三四年七月二九日一一時三〇分付納税告知書をもつて納期限を同日一二時三〇分と定めてなされた点において、余りに短かい納税猶予期間を定めた違法がある。

2 原告栗林に対する納付通知も、昭和三四年七月一三日付通知書をもつて納期限を同日午後二時四〇分と定めてなされた点において、右同様の違法がある。

3 原告鈴木に対する納付通知も、昭和三四年七月三一日付通知書をもつて納期限を同日午後一時四五分と定めてなされた点において、右同様の違法がある。

第四原告らの本案に関する主張に対する認否および反論

一  原告らの本案に関する主張一は認める。

二  同二も認める。但し、原告竹中寛に対する納付通知にかかる納付期限は昭和三四年八月五日である。

三  同三のうち、被告が原告梅軒に対して酒税調査決定および納税告知をしたこと、ならびに原告谷崎および広瀬の両名に対する酒税法違反被告事件が第一審で無罪、第二審で控訴棄却となり、無罪に確定したことは認め、その余は争う。

原告梅軒に対する犯則嫌疑事件は名古屋国税局収税官吏唐木宗良らにより立件され、調査された結果、昭和三四年七月二三日国税犯則取締法一三条一項により静岡地方検察庁検察官に告発されており、被告は、右収税官吏より送付された調査資料をもとに本件課税処分を行つたのである。

また、犯則事実の調査は課税標準石数の調査を兼ねうるものであつて、このことは、たとえ、犯則事実の調査が課税標準の決定庁である税務署長によつてではなく、国税局の収税官吏によつて行われた場合にも同様であり、税務署長において、国税局収税官吏による犯則事実調査によつて得られた資料を課税標準石数の決定のために利用することは何ら妨げられるものではない。

四  同四は争う。

五  同五も争う。

1  原告梅軒に対する納税告知についていえば、納期限は租税債務履行の終期を定めるものであるから、必ずしも日をもつて指定することを要せず、一定の時をもつて指定することも許される(民法一三九条)のであり、時をもつて指定したこと自体には何ら違法はなく、また納期限が納税告知書発付日であることについても、本件納期限は旧国税徴収法四条ノ一第六号所定の繰上徴収にかかる納期限であるから、納付行為という事実行為に必要な最少限の期間が与えられれば足ると解されるので、この点においても違法はない。なお、右納税告知書は、本件納期限の約二七分前である昭和三四年七月二九日一二時三分ころ、原告梅軒に送達されている。

2  原告栗林、同鈴木に対する各納付通知についていえば、右各通知は同法四条ノ四但書の責任の限度を周知させるためなされたものにすぎず、単なる事実行為にすぎないから違法の問題を生ずる余地がない。

第五被告の本案に関する主張

一  処分の概要および不服申立の概要

1  原告梅軒は、昭和二三年五月一二日設立された酒類の製造・販売を目的とする会社で、静岡県榛原郡相良町堀野新田五七〇番地の一に本店および酒類製造場を有し、被告から合成清酒および焼酎についてその製造および販売の免許を受け、右免許酒類の製造販売を営んでいたが昭和三四年五月一五日解散し、爾後は清算の目的の範囲内で存続しているものである。

2  原告栗林、同鈴木、同竹中、同谷崎および同相川は、原告梅軒が解散するに際し、清算人に就任して原告梅軒の清算事務を掌つたものである。

3  原告萩原、同谷崎吉揮および同池守は、昭和三四年五月当時原告梅軒の株式を有していたもので、昭和三四年七月二五日開催された株主総会決議により一株当り一八円七〇銭あてそれぞれ次表のとおり保有株式数に応じ残余財産の分配として金員の分配を得たものである。

原告氏名

保有株式数

残余財産分配額

萩原平吉

一、一〇〇株

二〇、五七〇株

谷崎吉輝

七、四五〇株

一三九、三一五株

池守儀信

二〇、〇〇〇株

三七四、〇〇〇株

4  ところで原告梅軒は、昭和三二年二月分ないし昭和三三年六月分の酒税課税標準石数を酒税法二四条一項の規定にもとづき別表一のB欄記載のとおりそれぞれ法定申告期限内に被告に申告した。

5  被告は、右申告の内容について調査を行つた結果、原告梅軒の課税標準石数が別表一のA欄記載のとおりであることが判明したので、前記申告は過少申告であると認め酒税法二五条一項により昭和三四年七月二九日原告梅軒に対し酒税調査決定通知書を送達することによりその旨を通知し、かつ、旧国税徴収法四条ノ一第六号の規定により納期限を同日午後〇時三〇分と指定した納税告知書を右酒税調査決定通知書と同時に送達した。

6  原告梅軒は、その納期を経過しても右酒税を納付しなかつたので、被告は、旧国税徴収法四条ノ四の規定により原告梅軒が昭和三四年七月二五日の残余財産分配決議当時有していた現金七、四八〇、〇〇〇円の分配の任にあたつた清算人である原告栗林ら五名において残余財産の分配額七、四八〇、〇〇〇円を限度として連帯して納付する義務があると認め、次表のとおり納付通知書を送達した。

清算人氏名

通知日付

納付すべき金額

納付期限

栗林藤蔵

三四・七・三一

七、四八〇、〇〇〇

三四年七月三一日

午後二時四〇分

鈴木忠次郎

三四年七月三一日

午後一時四五分

谷崎吉太郎

三四・八・一

三四年八月三日

午前一〇時

竹中寛

三四年八月五日

相川龍蔵

7  また被告は、右残余財産について一株当り一八円七〇銭あてその保有株式数に応じ財産の分配として金員を得たもののうち、原告萩原、同谷崎吉揮、同池守ほか一五名に対しても、旧国税徴収法四条ノ四の規定により、その分配を受けた財産の価額を限度として連帯して納付する義務があると認め、昭和三四年九月二一日その旨の納付通知書を送達する。

8  ところで、原告らは、6、7で述べた納付通知書による催告にもかかわらず、納付をしなかつたので、被告は、まず、原告粟林、同鈴木の財産について昭和三四年七月三一日から同年一〇月二七日までの間にそれぞれ別紙差押処分目録(一)、(二)記載のとおり差押を行つた。

また原告谷崎に対しては、同目録(四)記載のとおり、同人が昭和三四年八月三日現在で焼津信用金庫藤枝上支店に有していた普通預金四〇、七八五円を差押えたが、その余の財産が被告管轄地域外である富山県西礪波郡にあることが判明したので、被告は、昭和三四年八月四日、旧国税徴収法三一条の規定にもとづき、前記地域を管轄する礪波税務署長に滞納処分の引継ぎを行い、同税務署長は、原告谷崎の財産について昭和三四年八月二一日および昭和三五年六月六日差押を行つた。

原告竹中に対しては、同人の財産がいずれも被告管轄地域外である石川県加賀市にあつたので、被告は、昭和三四年八月四日同市を管轄する小松税務署長に滞納処分の引継ぎを行い、同税務署長は、原告竹中の財産について同目録(三)記載のとおり昭和三四年八月一〇日差押を行つた。

9  原告梅軒は、昭和三四年八月三日請求の趣旨一の1記載の各処分を不服として、被告に対し、旧国税徴収法三一条ノ二第一項により再調査の請求をし、その後昭和三四年一〇月三日右再調査請求は旧国税徴収法三一条ノ三第三項の規定による同意によつて名古屋国税局長に対する審査の請求とみなされることになつたが、同国税局長は昭和三五年一〇月一七日付で右審査請求を棄却する旨の決定をした。

10  原告栗林、同鈴木は、昭和三四年八月三日付で前記6で述べた納付通知および前記8で述べた差押えのうち、原告栗林にかかる昭和三四年七月三一日付有体動産の差押処分および原告鈴木にかかる昭和三四年七月三一日付有体動産の差押処分を不服として、また、原告谷崎、同竹中および同相川は、昭和三四年八月五日付で前記6で述べた納付通知を不服として、それぞれ被告に対し、旧国税徴収法三一条ノ二第一項により再調査の請求をした。 右各原告らの再調査請求は、原告栗林および同鈴木については昭和三四年一〇月五日に、同谷崎については同年一一月九日に、同竹中については同月七日に、同相川については同年九月二五日に、それぞれ旧国税徴収法三一条ノ三第三項に規定する同意によつて名古屋国税局長に対する審査の請求とみなされることになつたが、同国税局長は昭和三五年九月二一日右各審査請求を棄却する旨の決定をした。

11  前記7で述べた納付通知書の送達を受けた者のうち、原告萩原は昭和三四年九月三〇日付で、同谷崎吉揮および同池守は同日付で、それぞれ右納付通知を不服とする再調査の請求をしたが、被告は、同年一二月一一日いずれもこれを棄却する旨の決定をした。

なお、右原告らからその後旧国税徴収法三一条ノ三第一項に規定する審査の請求が行われた事実はない。

二  本件酒税調査決定(本件課税処分)の根拠

1  概論

(一) 原告梅軒は、被告から合成清酒および焼酎甲類の製造を本店所在地と同一の静岡県榛原郡相良堀野新田五七〇番地の一所在の製造場において行う免許を受け右製造場において酒類原料用アルコールの製造機械である連続式蒸溜機等を設置して原料用アルコールを製成し、これを原料として合成清酒第二級(アルコール分一五度)、焼酎甲類(アルコール分二〇度および同二五度)を製造し移出販売していたから、酒税法六条一項の規定によりその製造場から移出した酒類の石数に応じ酒税を納める義務を有したものであるが、昭和三二年二月分ないし同年一二月分、昭和三三年五月分および同年六月分の合成清酒第二級ならびに昭和三二年四月分および同年七月分ないし同年一一月分の雑酒第二級について別表二記載のとおり移出販売を行つたにもかかわらず別表一のB欄記載のとおり移出しもしくは全く移出しなかつた旨申告したので、被告はこれを過少申告と認め、原告梅軒が簿外移出した数量のうち移出先が容易に判明した数量のみを申告数量に加算した別表一のA欄記載の数量を課税標準石数と決定し、酒税法二五条一項によりその旨の通知をしたものである。

(二) 右課税標準石数算出の根拠は次のとおりである。

(1) 原告梅軒において酒造課長工場事務課長、工場事務主任および税務主任を兼務し、酒類の製造、出荷および酒税法関係諸手続についての責任者であつた増田与重は、出荷および製品在庫について管理するため毎日の出荷数量および製品の在庫について、メモ帳三冊(乙第九号証)および雑記帳(乙第八号証)(以下両者を合せて「増田メモ」と総称する。)にその数量を記載していたが、右増田メモによれば別表二記載のとおり酒類を出荷した事実が認められる。

然るに、前述のとおり原告梅軒は別表一のB欄に記載した数量のみしか申告しなかつた。

(2) 従つて、別表二記載の数量が本来課税標準石数とさるべきであるが、被告は、そのうち、移出先が容易に判明した次表記載の大洋酒類および昭和酒販に移出した合成清酒第二級および酒類原料用アルコールの移出数量のみを申告数量に加算し、これを酒税課税標準石数と決定した。

(3) 大洋酒類および昭和酒販に簿外移出した年月日、種類および移出数量は次表のとおりである。

大洋酒類

番号

年月日

種類

移出数量(合)

1

三二・二・一六

合成清酒第二級

一六、〇〇〇

2

三二・三・一七

一六、〇〇〇

3

三二・四・二二

四、〇〇〇

4

雑酒第二級(九六度)

一〇、〇〇〇

5

三二・四・三〇

合成清酒第二級

一一、〇〇〇

6

三二・四・三〇

雑酒第二級(九六度)

五、〇〇〇

7

三二・五・八

合成清酒第二級

一六、〇〇〇

8

三二・六・二

一二、五〇〇

9

三二・六・二四

一六、〇〇〇

10

三二・七・九

五、八〇〇

11

雑酒第二級(九六度)

一三、五〇〇

12

三二・七・二四

合成清酒第二級

三、〇〇〇

13

雑酒第二級(九六度)

一三、〇〇〇

14

三二・八・四

合成清酒第二級

三、〇〇〇

15

三二・八・四

雑酒第二級(九六度)

一三、〇〇〇

16

三二・八・二四

合成清酒第二級

一六、一〇〇

17

三二・九・三

一六、〇〇〇

18

三二・九・二一

一一、〇〇〇

19

雑酒第二級(九六度)

五、〇〇〇

20

三二・九・二八

合成清酒第二級

五、〇〇〇

21

三二・九・二八

雑酒第二級(九六度)

九、〇〇〇

22

三二・一〇・六

合成清酒第二級

六、〇〇〇

23

雑酒第二級(九六度)

一〇、〇〇〇

24

三二・一〇・一八

合成清酒第二級

四、〇〇〇

25

雑酒第二級(九六度)

一二、一〇〇

26

三二・一〇・二五

合成清酒第二級

一〇、〇〇〇

27

三二・一〇・二七

四、〇〇〇

28

雑酒第二級(九六度)

一二、〇〇〇

29

三二・一一・七

合成清酒第二級

六、一〇〇

30

雑酒第二級(九六度)

一〇、〇〇〇

31

三二・一二・二

合成清酒第二級

三、一〇〇

32

雑酒第二級

一三、一〇〇

33

三二・一二・一七

合成清酒第二級

一六、〇〇〇

34

三二・一二・二四

一六、〇〇〇

35

三三・五・一

一六、〇〇〇

36

三三・五

八、〇〇〇

37

三三・六

合成清酒第二級

一三、〇〇〇

昭和酒販

番号

年月日

種類

移出数量(合)

38

三二・一一・二八

合成清酒第二級

一三、五〇〇

39

三三・五

五、〇〇〇

2  増田メモの信憑性について

(一) 原告梅軒の組織

(1) 原告梅軒は、従業員数四〇名程度の小規模な会社であるが、その機構を大別すれば事務所と工場にわかれており、昭和三二、三年ごろの人的構成を表にすると別表三のとおりである。

(2) 工場における各課のうち、主な課の仕事の内容は次のとおりである。

イ 酒精課(酒精部と称されていたこともあつた。)甘藷等の原料から蒸煮機、連続式蒸溜機によつて酒類原料用アルコールを製造するところ。

ロ 酒造課(合成部と称されていたこともあつた。)酒精課で製造された酒類原料用アルコールから合成清酒および焼酎を製造し、製造されたこれらの酒類をびんやかめに充填するところ。

ハ 機関課(機関部と称されていたこともあつた。)蒸煮機、蒸溜機等に蒸気を送りこみ、かつ右機械の管理をするところ。

ニ 工場事務課

原材料、容器類、製品の引取り、保管、出荷をするとともに、酒税法に規定された正規帳簿を作成し、税務署に対し必要な諸申告、申請をするところ。

(3) 増田、水井、植松の担当する職務内容は次のとおりである。

イ 増田与重

酒造課長として、酒類の製造についての責任者であるとともに、工場事務課長(兼工場事務主任兼税務主任)として酒類の出荷、保管、原材料の入荷引取り、保管の監督をし、酒類の製造・移出の総体を掌握する者として酒税検査に立会い、かつ、酒税法の規定による諸帳簿の記帳および酒税法上の諸申告申請を行つていた。

ロ 水井喜平

仕込主任(別名製造主任)、香味液主任として酒類原料用アルコールから合成清酒および焼酎甲類の製造を行つていたほか、原告梅軒は小規模な会社で人手不足でもあつたので、出荷業務を手伝うこともあつた。

ハ 植松文雄

詰場主任、香味液主任として製造された合成清酒および焼酎甲類をびんやかめに詰め、かつ、倉庫主任としてこれら酒類の保管、出荷に従事していた。

(二) 酒類の製造

(1) 原告梅軒における酒類の通常の製造方法は次のとおりである。

イ 酒類原料用アルコール

原告梅軒が製造販売する合成清酒、焼酎甲類は、生甘藷その他を原料として製成されるアルコールから作られるが、右アルコールは、澱粉質原料である甘藷その他の原料を蒸煮機で蒸煮し、糖化機で糖化させたうえ、醗酵槽でアルコール醗酵させて作られたアルコールもろみを連続式蒸溜機にかけて蒸溜して製成されていたものである。

ロ 合成清酒

合成清酒は、前記酒類原料用アルコールを原料とし、これに水およびぶどう糖、水、ソルピツト、グルタミン酸ソーダ、コハク酸その他の法定原料を添加して作られるものであり、原告梅軒においては右方法により作られた合成清酒を一升びんまたは一斗かめ等の容器に充填し、「梅正宗」という商標により販売していた。

ハ 焼酎甲類

焼酎甲類は、前記酒類原料用アルコールを水と混和させて作られるものであり、原告梅軒においては右方法により作られたものを一升びんまたは一斗かめ等の容器に充填し、「梅軒」という商標により販売していた。

(2) 簿外酒類の製造

酒類製造業者は、酒類が製成されたときは、酒税法四一条の規定により、税務署の職員の検定を受けることとなり、同法四二条の規定により検定を受けない酒類等は処分または移出を禁止されている。

ところで、酒類原料用アルコールの検定を行うに際しては、連続式蒸溜機から流出されたものを検定のために入れる容器(通常これを検定タンクと呼んでいる。)に臨みその容在数量およびアルコール分を測定する。

従つて、アルコールが検定タンクに入るまえにこれをぬきとるとか、または検定タンクに容在しているアルコールを抽出口から検定前にぬきとれば、それ自体を簿外移出することや、右アルコールを原料として酒類を製造し簿外移出することも、また検定を受けた原料用アルコールや酒類を簿外移出した場合にそれらの埋合せに用いることもできる。

なお、被告のいる島田税務署と原告梅軒との間は六里ほどあり、東海道本線にて島田から藤枝へ出て地方鉄道が経営する軽便電車に乗りかえることとなるので片道約一時間半を要する遠距離にあつたため、その時間的制約もあつて要請検査以外の検査は実施され難い実情にあつたので、原告梅軒に対する被告の検査監督は、月に二~五回臨場する程度であり、しかも、大部分は原告梅軒からの要請による要請検査であり、比較的緩かなものであつて、前記簿外酒類の製成はかなり容易に行われていたものである。

(三) 酒類の移出

(1) 原告梅軒における酒類の通常の移出方法は次のとおりである。

原告梅軒が酒類を製造場から移出販売する場合には、事務所の販売係横山喜一が出荷伝票(三部複写のもの)を起票し、これが工場長沢入竜起から製造課長増田与重を経由して倉庫係である植松文雄または水井喜平に渡され、倉庫係は、その出荷伝票に従つて酒類の移出を行つていた。

移出が終つたあとの伝票は、一日の作業終了後、倉庫係から増田与重のところへ回付され、増田はこのうち一枚を手元に残すとともに他の二枚を工場長に回付し、工場長からそのうち一枚が起票者である横山喜一に返還されるしくみとなつていた。

増田与重は、手元に残した伝票により酒類売上帳(乙第六〇号証)を記帳し、記帳済みとなつた伝票は別途に編綴して保管していた。

右酒類売上帳は、酒税法四六条(記帳義務)の規定により記帳されていたものであり、酒税法二四条(移出石数等の申告)の規定による課税標準石数等申告書は、右酒類売上帳によつて作成されていたものである。

(2) 簿外酒類にかかる移出

簿外酒類の移出についても伝票が横山喜一により起票され同人に返還されるまでの手続きは前記と同方法により行われていたが、ただ異なる点は、販売係横山喜一が作成する伝票に数量、単価、金額が記載されるべきところ数量のみが記載されていたことおよび総務部長広瀬新一あるいは工場長沢入竜起から倉庫係に対し、口頭で出荷指示がなされる場合もあつたことである。

簿外酒類の移出に使用された伝票は倉庫係から増田与重に回付されるとこれを前記酒類売上帳に挾んでおいたり、また、仮記帳して伝票は破棄したりしておき、後に右簿外移出数量に見合う酒類を製造して在庫高を補充してから挾んでおいた伝票を破棄したり、または、仮記帳した個所を破棄して書直したりしていたものである。

(四) 増田メモの意義

(1) 増田メモの記載内容

イ 乙第九号証について

増田メモのうちメモ帳三冊<証拠省略>は、昭和三二年一月二五日から昭和三三年七月一四日までの間における左記事績を毎日記録していたものである。

<1> 酒類の移出事績(移出先別または取扱者別に酒類の種類、販売用容器別の移出本数)

<2> 酒類原料用アルコールの原料である生甘藷および切干甘藷等の仕入事績

ただし、昭和三二年六月三日から同年同月二三日までは記載されていないが、これは、原告梅軒が同年五月二七日頃から名古屋国税局収税官吏による酒税法違反嫌疑事件の調査を受けたことにより、常時携帯所持していた前記メモ帳が発見されて違反事件が明白となるのを恐れた増田が右期間これを携帯せず、その結果記載できなかつたものである。

ロ 乙第八号証について

増田メモのうち雑記帳<証拠省略>は、昭和三一年二月六日から昭和三二年一二月七日までの間における左記事績を毎日記録していたものである。これは乙第九号証のように個々の仕入、出荷は記載しておらず、主として在庫管理を目的とするものである。

<1> 酒類の販売用容器別の詰口、移出、在庫の各本数

<2> 酒類販売用容器に貼付するラベル、表示証類、右容器の施栓用の王冠(一升びん用)、天星・腹星(一斗がめ用)、右容器の内一斗がめの包装用の菰縄のそれぞれの使用数量

<3> ぶどう糖・水飴・コハク酸等の合成清酒製造用原料の使用事蹟

<4> 酒類の販売用容器の受入事蹟

(2) 増田メモの作成経緯

増田は、前記のとおり酒類製造から移出に至るまでの一切を把握する立場にあたつたため、これらに関する全ての資料、情報は同人に集中し、同人は、右資料情報をもとに、日々刻女メモを作成していたのであるから、仮に原告梅軒において簿外酒類の移出を行わなかつにとすれば、増田メモに記載されている事項はすべて会社帳簿に記載されるべきはずの事項というべきであり、この意味において、増田メモは、通常の業務の過程において作成された帳簿と等しく正確性の高いものである。

以下作成経過について詳述する。

イ 増田メモの記載のうち、酒類の移出事績および詰口、移出、在庫の各数量は、次の経緯により記載される。

<1> 倉庫係の植松文雄または水井喜平は、毎日の作業終了後酒類の種類別および容器別に詰口本数、移出本数在庫本数等をメモ紙に記載し、当日出荷済みとなつた出荷伝票とともに増田に回付してくる。

<2> 増田は、右メモ紙および出荷伝票にもとづき会社内でメモ帳(乙第九号証)に記載したのちメモ紙およびメモ帳は自宅に持帰つてこれらにもとづいて雑記帳(乙第八号証)に記載し、翌日、メモ紙およびメモ帳を持つて出勤し、右メモ紙は工場長に渡していた。そしてメモ帳は常時携帯所持していたが、雑記帳は自宅に保管していたものである。

ロ また、酒類用原料の受入事績については、資材係から伝票およびメモが回付されてくるので、これによりメモ帳に記載していたが、正規の仕入れとなるものは伝票により、また簿外仕入れとなるものはメモにより回付されていた。

(3) 増田メモの利用方法

増田は、増田メモを記載することによつて法定帳簿との調整を図り酒税検査に対処していたものである。

以下、法定帳簿との調整の仕方を具体的にのべる。

イ 酒類の移出事績について

酒類製造者は、酒税法四六条および酒税法施行令三四条一項七号の規定により移出した酒類の数量、価格等を帳簿に記載する義務があるので、原告会社でも税務主任の増田が酒類売上帳<証拠省略>にこれらの事項を記載していたが、増田が右帳簿に真実の酒類移出数量を記載していたとすれば、酒税検査の際、右帳簿の毎月分の移出数量の合計と原告会社が酒税法二四条(移出石数の申告)第一項の規定により提出した申告書に記載された数量との比較検討が行われ、その結果、簿外酒類の移出事実が容易に発覚したことであろう。

しかし、増田は、事実の酒類移出事績はメモ帳に記載しておき、酒類売上帳には移出した酒類の一部を除外して記載し、右帳簿に記載した移出数量を集計して前述した申告書を作成し、酒類売上帳の検査が行われても簿外酒類の移出事実が発覚しないよう調整していたものである。

ロ 酒類用原料の仕入事績について

酒類製造者は、酒税法施行令三四条一項一号および三号の規定により原料の受払事績を帳簿に記載する義務があるので、原告会社でも増田が原料受払帳<証拠省略>にこれらの事績を記載していたが、増田が右帳簿に真実の原料受払数量を記載していたとすれば、酒税検査の際に原料の払出事績からアルコール製造高の適否の検討が行われ、その結果簿外酒類の製造事実が容易に発覚したことであろう。

しかし、増田は、真実の原料受入事績はメモ帳に記載しておき、原料受払帳には簿外酒類製造用原料の受入事績およびこれに対応する払出事績をいずれも除外して記載し、原料受払帳の検査が行われても海外酒類の製造事実が発覚しないよう調整していたものである。

ハ 酒類の容器別受払事績について

酒類製造者は、酒税法施行規則四条三号の規定により酒類を販売用の容器に詰めたときはこれに関する事項を記載する義務があるので、原告梅軒でも増田が壜樽詰受払帳に容器別の詰口、払出、在庫の各本数を記載していたが、増田が右帳簿に真実の各本数を記載していたとすれば、酒税検査の際に右帳簿の払出本数から計算された移出石数と前記申告石数との比較検討が行われ、その結果簿外酒類の移出事実が容易に発覚したことであろう。

しかし、増田は、真実の酒類の詰口、払口、在庫の各本数は前記雑記帳に記載しておき、壜樽詰受払帳には前記酒類売上帳に記載しなかつた簿外酒類の払出本数および右本数の在庫不足を補充するために簿外製造した詰口本数を除外して記載し残高を調整し、壜樽詰受払帳の検査が行われても簿外酒類の製造、移出事実が発覚しないよう調整していたものである。

(五) 増田メモと法定帳簿とが符合することについて

増田メモは、酒類の製造・出荷に関するすべての資料、情報を把握していた増田が日々刻々記帳したものであるから極めて正確性の高いものであることは前述のとおりであるが、以下、念のため、正規帳簿である酒類売上帳(乙第六〇号証)、原料受払簿(乙第一二号証)の酒類移出事績、原料仕入事績との対照を試みてみることとする。

(1) 乙第六〇号証との対照

酒類製造者は、前述のとおり、酒税法四六条、酒税法施行令三四条一項七号の規定により、移出した酒類の数量、価格等を帳簿に記載する義務があり、そのうち合成清酒に関し昭和三一年一〇月四日から同三二年五月二六日の間の売上事績を記載したもののうち昭和三二年一月二一日以降の部分が乙第六〇号証の一ないし一二の酒類売上帳である。

この酒類売上帳は原告梅軒の法定帳簿であるが、この帳簿に記載された課税移出石数に基づいて原告梅軒は酒税課税標準石数申告書を作成しており(昭和三二年二月分ないし同年五月分<証拠省略>記載事項のうち酒税法二二条による課税欄の課税標準石数合成清酒第二級欄の石数と酒類売上帳の各月の月計石数が一致する。)、この酒類売上帳と増田メモを対査すると酒類売上帳に記載されている「移出先」の「販売場位置」が東京、神奈川、千葉等静岡県外の移出先にかかるものについては二件を除きすべて増田メモに記載されており特定することができるし「販売場位置」が県内と記載され移出についても、増田メモにおいて取扱販売員名によらずに記載されているものについては特定ができる(別表四参照)。

酒類売上帳に記載されている「移出先」の「販売場位置」が「県内」と記載されているものについての一部は特定できないが、この点については、前述したように、増田メモにおいては取扱い販売員により一括記載されているためであり、この場合においても、増田メモに取扱員名で記載されている日付の前後の日の酒類の種類および容器区分と売上帳に記載されているそれとを個個に対比していけば、売上帳の一日ごとの合計数量は増田メモに記載の数量と同量またはそれより少い数量によつて記載されていることが明らかとなる。

例えば、次のとおりである。

<1> 乙第六〇号証の五においては、三月七日に一升びん一〇本(移出先・増田妙子)、同二〇本(同・寺田益次)、同二〇本(同・八木賢一)の合計五〇本および一斗かめ二本(移出先・松浦吾一)、同三本(同・谷口時次)の合計五本を県内に移出したこととなつているが、これを増田メモで見ると、乙第九号証の一の二〇においては、三月七日に合成びん五〇本および合成かめ五本を原告梅軒の販売員寺田が取扱つて移出したと記載されている。

(3.7 寺田 合ビン50 合カメ5 酎カメ15)

<2> 乙第六〇号証の六においては、三月二九日に一升びん五〇本を県内の萩原弘に移出した事となつているが、これを増田メモで見ると、乙第九号証の一の一八においては、三月二九日に合成びん五〇本を寺田が取扱つて移出したと記載されている。

(3.29 合ビン50 寺田扱)

<3> 乙第六〇号証の一〇においては、五月一日に一升びん五〇本を県内の一力旅館に移出したこととなつているが、増田メモには五月一日付の合成びんの移出はない。

しかし、乙第九号証の一の一七によれば、その以前である四月二九日に従業員寺田が合成びん五〇本を取扱つて移出したと記載されている(4.29 寺田合ビン50 酎カメ20)が、売上帳には四月二九日の移出は記載されていない。よつて、四月二九日に移出したものを五月一日に移出したとして売上帳に記載したものと推定される。

この推定は、次の理由により合理性が高いものである。

すなわち、乙第六〇号証の一〇によれば、五月一日に県外の遠山商店、原徳太郎、和泉屋商店に対する移出があるが、乙第九号証の一の一七によれば、これらは四月二八日または四月三〇日に移出が行われており、右と同様に二~三日遅れて売上帳に記載されているものである。

(2) 乙第一二号証との対照

酒類製造者は、原料受払簿についても酒税法上の記帳義務があるが、そのうち生甘藷に関し昭和三一年一〇月一日から同三二年五月三日の間の受入れ、払出し事績を記載したもののうち昭和三二年一月二一日以降の部分が乙第一二号証の一ないし一二の原料受払簿である。原告梅軒はこの帳簿に記載された受入数量・払出数量に基づいて酒類の原料製成および移出高等の製造場調査表を作成しており(昭和三二年二月分ないし同年四月分<証拠省略>記載事項のうち入荷高欄の当月分生甘藷数量と原料受払等受入欄の各月の月合計数が一致する。)この原料受払簿と増田メモを対査すると、原料受払簿に記載されていることは昭和三二年一月二六日および同二八日の二口を除き全て増田メモに記載されており特定である(別表五参照)。

なお、乙第一二号証は単位を匁としているが、増田メモにおいては単位を貫匁として記載されている。

(六) 増田メモ記載の移出数量が物理的に許容されることについて

増田メモの正確性が極めて高いことは、前述のとおりであるが、さらに念のため、同メモに記載されている総移出数量が、同メモに記載されている仕入原料量から理論的に計算されるアルコール製造量および原告梅軒のボイラー主任坂本菊松が記録したボイラー日誌(<証拠省略>以下「坂本日誌」という。)に記載されている蒸溜時間から理論的に計算されるアルコール製造量のいずれからアプローチしても裏付けられることを次のとおり明らかにする。

(1) 仕入原料量から計算されるアルコール製造量からアプローチ

イ 結論

原告梅軒が昭和三二年二月一日から昭和三三年六月三〇日までの間(以下「本件計算期間」という。)に当該製造場から移出した酒類の移出数量は増田メモによると別表六のとおり合成清酒第二級(一五度)二、九四五、五六〇合、焼酎甲類(二五度)二、八六五、六七〇合、同(二〇度)五六、九〇〇合および雑酒第二級(九六度)一二五、七〇〇合であり、右数量の酒類を製造するに必要な純アルコール石数(純アルコール石数とは、酒類中に含有されるアルコール分を一〇〇%に換算した石数をいい、例えばアルコール分九六%を含有する五〇石の酒類の純アルコール石数は五〇石×〇・九六=四八石として計算される。)は、一、二九〇、三〇三合であるところ(計算方法は後述する)、増田メモ(<証拠省略>)に記録された生甘藷等の仕入数量から計算される純アルコール石数は、一、一七〇、一一八合であり、これに本件計算期間の一日前である昭和三二年一月三一日現在における酒類の在庫量の純アルコール石数三〇五、九八五合を加算すると一、四七六、一〇三合となり、これから本件計算期間の終期である同三三年六月三〇日現在における酒類の在庫量の純アルコール石数一三二、二七二合を減算すると一、三四三、八三一合となるから結局前記増田メモ記載の移出数量を移出することは、物理的に十分許容されるものということができる。

ロ 計算方法

<1> 増田メモ記載の総移出数量の純アルコール石数

合成清酒第二級についてはアルコール度数が一五度であるので四四一、八三四合(二、九四五、五六〇合×〇・一五)焼酎甲類(二五度)についてはアルコール度数が二五度であるので七一六、四一七合(二、八六五、六七〇合×〇・二五)焼酎甲類(二〇度)についてはアルコール度数が二〇度であるので一一、三八〇合(五六、九〇〇×〇・二〇)雑酒についてはアルコール度数が九六度であるので一二〇、六七二合(一二五、七〇〇合×O・九六)以上合計一、二九〇、三〇三合である。

<2> 生甘藷等から製造される純アルコール石数

(イ) 酒類原料用アルコールの製造方法については前述のとおり生甘藷等澱粉質原料の澱粉を糖化し醗酵させてアルコールとするものである。

ところで、純澱粉一〇〇貫よりアルコール分一〇〇%のアルコールを一、四八四合収得できる(これを理論アルコール石数という。)ことは、理論上明らかである。したがつて原料中の澱粉価より(澱粉価とは原料に含まれる純澱粉の比率をいう)理論的に収得できる純アルコール量を推定することができる。すなわち、原料(メ)×澱粉価(%)×1.484が理論的に収得されるアルコールである。しかし、澱粉質原料の糖化したものを醗酵させることによつて得る熟成もろみによるアルコール分は当該もろみの原料の蒸煮の不充分、醗酵の不充分その他の理由から理論的に算出されるアルコール分より減少する。この減少を割合によつてあらわしたものを醗酵歩合という(すなわち、もろみ原料から取得しうるべきアルコール量と熟成もろみのアルコール量との比率でありその算式は熟成もろみ石数×熟成もろみアルコール%/1.484×原料メ数×澱粉価%×100である。)さらに熟成もろみによるアルコールを蒸溜機によつて蒸溜する場合当該蒸溜機の性能および操作の欠減、その他の理由により蒸溜に件う減少がある。この減少を割合によつてあらわしたものを蒸溜歩合という(すなわち、熟成もろみのアルコール量と蒸溜製成したアルコール量の比率でありその算式は熟成もろみ石数×製成もろみアルコール%/熟成もろみ石数×熟製成もろみアルコール%×100である。)これら醗酵歩合および蒸溜歩合を原料から算出されるアルコール石数に乗じることにより現実に製造可能なアルコールが算定できるのである。

(ロ) 原告梅軒は、生甘藷、切干甘藷および澱粉粕を原料として酒類原料用アルコールを製造していたもので、これら原料から製造される純アルコール量は次のとおりである。

A 生甘藷からの純アルコール量

(A) 本件計算期間における増田メモ(<証拠省略>)による仕入数量(以下「増田メモ期中受入数量」という。)は次表のとおり一八五、九〇九・四貫匁である。

年月

数量(貫匁)

三二・二

一一、七八三・〇

九、六一五・六

七、二一三・五

三、三七四・〇

一六、四二一・八

一〇

四三、三九八・五

一一

六三、五九一・九

一二

二七、四四一・五

三三・一

二、三四五・〇

一六八・〇

四八・五

五〇八・一

一八五、九〇九・四

右増田メモ期中受入数量に原告梅軒における昭和三二年一月三一日現在在倉数量一五、六八五貫匁を加算した二〇一、五九四・四貫匁が本件計算期間における生甘藷使用数量となる。

なお、昭和三三年六月末日現在の在庫数量を零としたのは、次に述べる理由によつてである。

生甘藷は通常八月ごろから一〇月ごろにかけ収穫され、その後は貯蔵されていたものを購入し使用するものであり、五月、六月ごろの購入は極めて少量である。またこの時期は腐敗し易いため在庫をもたないのが常識となつている。現に原告梅軒においても前年の昭和三二年六月末日における在庫は零となつている。

(B) ところで、生甘藷を使用するにあたつては腐敗その他による欠減が考慮されるものであり、この欠減は各古屋国税局が調査した酒類用原料使用状況報告書(<証拠省略>)によるとその欠減平均割合は二・六四%であるが、これを整数にして欠減割合三%とし、欠減量を六、〇四八貫匁に算定のうえ、これを前記生甘藷件用数量二〇一、五九四・四貫匁から差引いた一九五、五四六貫匁が実使用量となる。

生甘藷に含有する澱粉量は原告梅軒の生甘藷にかかる平均澱粉価が二一・五%であるので、この実使用数量一九五、五四六貫匁に右平均澱粉価二一・五%を乗ずると四二、〇四二貫匁の澱粉量となり、これに理論アルコール石数を乗ずると六二三、九〇三合の理論アルコールが製造される計算となる。

(C) 右理論アルコール数量に対し製造工程中における醗酵歩合及び蒸溜歩合を適用し、実際に収得可能な石数を算定すべきであるが、原告梅軒の製造実績(昭和三一年一〇月一日から昭和三二年九月三〇日までの間の平均醗酵歩合)による平均醗酵歩合は八二・八%であるので、右理論アルコール石数六二三、九〇三合に右醗酵歩合八二・八%を乗ずると五一六、五九一合となり、原告梅軒の設備する連続式蒸溜機により蒸溜する際の蒸溜歩合は、原告会社の製造実績(昭和三一年一〇月一日から昭和三二年九月三〇日までの間の平均蒸溜歩合)による平均蒸溜歩合によれば九八・二%であるので、前記醗酵歩合適用後の理論アルコール五一六、五九一合に右蒸溜歩合九八・二%を乗ずると本件計算期間中五〇七、二九二合の純アルコールが生甘藷から製造されたことになる。

B 切干甘藷からの純アルコール量

(A) 増田メモ期中受入数量は次表のとおり六〇、〇一六貫匁である。

年月

数量(貫匁)

三二・二

三、三九七・六

九一六・〇

四四〇・〇

三、一八四・〇

一、五二八・〇

一〇、八四八・〇

一〇

一一

一二

四、四三二・〇

三三・一

一四、五八四・八

七、四六五・〇

六、六〇八・七

四、二四四・九

一、九一二・〇

四五五・〇

六〇、〇一六・〇

右増田メモ期中受入数量に原告梅軒における昭和三二年一月三一日現在在庫数量一三、二四八貫匁を加算した七三、二六四貫匁から原告梅軒が切干甘藷のまま移出した六、六六四貫匁を控除した六六、六〇〇貫匁が本件計算期間における切干甘藷使用数量となる。

なお、昭和三三年六月末日現在の在庫数量を零としたのは次に述べる理由によつてである。

原告梅軒が昭和三三年五月および六月に製成した原料用アルコール数量は申告によると五月分三〇、七二七合および六月分二三、三三三合計五四、〇六〇合であるが右アルコール数量は原告梅軒が申告した昭和三三年四月末日現在の原料在庫(切干甘藷二、五〇八貫匁、澱粉粕一、七一六貫匁)に増田メモにかかる同三三年五月分および六月分の切干甘藷受入数量二、三六七貫匁を加算して製造に供したとしても原料が不足することとなるため、昭和三三年六月末日現在の在庫数量を零とした。

(B) 切干甘藷の使用にあたつても貯蔵その他による欠減が考慮されるものであり、名古屋国税局が調査した酒類用原料使用状況報告書(<証拠省略>)によると、その欠減平均割合は〇・一九%であるが、これを整数にして欠減割合一%とし欠減量を六六六貫匁に算定のうえこれを前記切干甘藷使用数量六六、六〇〇貫匁から差引いた六五、九三四貫匁が実使用量となる。

切干甘藷に含有する澱粉量は福井酒造株式会社豊橋工場の昭和三二年四月から昭和三四年三月における原料用アルコール等の製成事績調による平均澱粉価によれば六六%であるので、この実使用数量六五、九三四貫匁に右澱粉価六六%を乗ずると四三、五一六貫匁の澱粉量となりこれに前述の理論アルコール石数を乗ずると六四五、七七七合の理論アルコールが製造される計算となる。

(C) 右理論アルコール数量に対し、さらに製造工程中における醗酵歩合および蒸溜歩合を適用し実際に収得可能の石数を算定すべきである。すなわち、理論アルコール数量六四五、七七七合に前記原告梅軒の醗酵歩合八二・八%を乗ずると五三四、七〇三合となり、これに前記原告梅軒の蒸溜歩合九八・二%を乗じると本件計算期間中切干甘藷から五二五、〇七八合の純アルコールが製造されたことになる。

C 澱粉粕からの純アルコール量

(A) 原告梅軒は、アルコールの製造をするにつき、澱粉粕も原料として使用していたが、次表のとおり原料である澱粉粕の受入れについて増田メモにはその記載が少く原告梅軒が被告に提出した申告書に記載された受入数量の方が多い。

年月

乙第九号証

数量(貫匁)

申告数量

(貫匁)

三二・二

二、四〇〇

六、一八四

七、〇三九

七、〇八三

一〇

七、〇五三

一一

一、三九二

一二

一、二九六

三三・一

一、四〇〇

一〇、七三五

二三、一一二

そこで右申告数量の適否について検討すると、酒税検査簿による本件計算期間における原告梅軒の澱粉粕の使用量は合計二〇、一四〇貫匁であるから(昭和三二年二月から昭和三二年九月までの間は、ト号法一四本で六、七二〇貫匁、昭和三二年一〇月から昭和三三年六月までの間はロ号法二〇本で一〇、〇六〇貫匁、へ号法八本で三、三六〇貫匁合計二〇、一四〇貫匁)、B欄記載の申告数量二三、一一二貫匁の方が正しいものと認められる。

増田メモにおいて、澱粉粕の受入数量の記載が少いのは澱粉粕が他の生甘藷、切干甘藷に比べ主要原料でなかつたため、その記載がおろそかになつていたからと推測される。

(B) 原告梅軒が申告した受入数量二三、一一二貫匁に原告梅軒における昭和三二年一月末日現在の在庫数量二、五一四貫匁を加算した二五、六二六貫匁が本件計算期間における澱粉粕使用数量となる(なお、昭和三三年六月末日現在の在庫数量を零とした理由は前記Bの(A)におけるなお書きと、同理由である。)。

(C) 澱粉粕の使用にあたつても貯蔵その他による欠減が考慮されるものであり、この欠減は名古屋国税局が調査した酒類用原料使用状況報告書(<証拠省略>)によるとその欠減平均割合は〇・二五%であるが、これを整数にして欠減割合一%とし欠減量を二五七貫匁に算定のうえこれを前記澱粉粕使用数量二五、六二六貫匁から差引いた二五、三六九貫匁が実使用量となる。

澱粉粕に含有する澱粉量は、原告梅軒の澱粉粕にかかる平均澱粉価が四五%であるので、この実使用数量二五、三六九貫匁に右平均澱粉価四五%を乗ずると、一一、四一六貫匁の減粉量となり、これに前述の理論アルコール石数を乗ずると一六九、四一三合の理論アルコールが製造される計算となる。

(D) 右理論アルコールに対し、さらに製造工程中における醗酵歩合および蒸溜歩合を適用し実際に収得可能の石数を算定すべきである。すなわち、理論アルコール石数一六九、四一三合に前記醗酵歩合八二・八%を乗じると一四〇、二七三合となり、これに前記蒸溜歩合九八・二%を乗じると本件計算期間中澱粉粕から一三七、七四八合の純アルコールが製造されたことになる。

(ハ) 以上のとおり原告梅軒が本件計算期間において受入れた生甘藷等の原料および昭和三二年一月三一日現在在庫数量から製造される純アルコール石数は、生甘藷から五〇七、二九二合、切干甘藷から五二五、〇七八合、澱粉粕から一三七、七四八合、合計一、一七〇、一一八合となる。

<3> 昭和三二年一月三一日および同三三年六月三〇日現在在庫する酒類の純アルコール石数

酒税法第四二条の規定によれば、酒類製造者は検定を受ける前に酒類を製造場から移出することは禁ぜられている。このため蒸溜した酒類であつても右検定を受けた後でなければ移出できないこととなつている。

原告梅軒が昭和三二年一月三一日現在および同三三年六月三〇日現在において所持していた酒類の純アルコールは検定を受けたものと蒸溜されたものであつてもまだ月末日現在では検定を受けていないものおよび製品に含まれているものによつて構成される。

(イ) 昭和三二年一月三一日現在在庫する酒類の純アルコール石数

昭和三二年一月三一日現在で原告梅軒が所持していた酒類の純アルコール石数は、原料用アルコール二三七、三〇三合(検定済のもの一八五、六八七合および未検定(一月中に蒸溜しているが同月末日までの間未検定で所持していたもの)五一、六一六合)ならびに製品である合成清酒および焼酎甲類(二五度)に含まれている純アルコール石数六八、六八二合の計三〇五、九八五合である。

なお、合成清酒に含まれている純アルコール石数は、在庫量一三七、三四七合にアルコール度数二〇度で換算し二七、四六九合(137,347×0.2=27,469)と算出したものであり、焼酎甲類(二五度)に含まれている純アルコール石数は、在庫量一六四、八五四合にアルコール度数二五度で換算し四一、二一三合(164,854×0.25=41,213)と算出したものである。

(ロ) 昭和三三年六月三〇日現在在庫する酒類の純アルコール石数

昭和三三年六月三〇日現在で原告梅軒が所持していた酒類の純アルコール石数は、原料用アルコール六五、二六一合(検定済のもの六二、〇四三合および未検定(六月中に蒸溜しているが同月末日までの間未検定のもの)三、二一八合)ならびに製品である合成清酒および焼酎甲類に含まれている純アルコール石数六七、〇一一合の計一三二、二七二合である。

なお、合成清酒に含まれている純アルコール石数は、在庫量一六七、〇三六合にアルコール度数二〇度で換算し三三、四〇七合(167,036×0.2=33,407)と算出したものであり、焼酎甲類に含まれている純アルコール石数は、二五度の焼酎については在庫量一二八、三七六合にアルコール度数二五度で換算し三二、〇九四合(128,376×0.25=32,094)と、二〇度の焼酎については在庫量七、五五〇合にアルコール度数二〇度で換算し一、五一〇合(7,550×0.2=1,510)と算出したものである。

(2) 坂本日誌の蒸溜時間から計算されるアルコール製造量からのアプローチ

イ 結論

原告梅軒が本件計算期間において酒類製造のために要した蒸溜時間は坂本日誌によれば合計五、三四一時間であるが、右時間を基礎にして蒸溜される純アルコール石数は、一、一〇七、六五六合であり、これに昭和三二年一月三一日現在における酒類の在庫量の純アルコール石数三〇五、九八五合を加算すると一、四一三、六四一合となり、これら同三三年六月三〇日現在における酒類の在庫量の純アルコール石数一三二、二七二合を減算すると一、二八一、三六九合となるから、結局前記増田メモ記載の移出数量の純アルコール石数一、二九〇、三〇三合を移出するにほぼ符合する蒸溜がなされたことになり、増田メモ記載の移出数量を移出することは物理的に十分許容されるものということができる。

ロ 計算方法

<1> 本件計算期間中の総仕込本数

原告梅軒が使用していた連続式蒸溜機はアルコール分五・七%を含有するもろみ一〇〇石を二四時間で蒸溜する能力を有していたので、原告梅軒は通常約一〇〇石のもろみを一仕込としていた(これを一仕込本数という。)。

坂本日誌により本件計算期間中の蒸溜時間を集計すれば五、三四一時間であり、これを一仕込分の蒸溜に要する時間、即ち二四時間で割れば二二二・五となり、右期間中の仕込本数は全部で二二二・五本である。

また、坂本日誌には昭和三二年四月一一日から同年同月二〇日までの一〇日間の記載が脱漏しているため四月一六、一八、一九日の三日間に蒸溜が行われた三本の仕込本数を加えれば、本件計算期間中の総仕込本数は全部で二二五・五本であつたと推認される。

<2> 本件計算期間中の純アルコールの総製造高

原告梅軒の昭和三一酒造年度中における一仕込当りの製成純アルコール石数は四、九一二合(<証拠省略>)によれば、当該年度中の製成純アルコールは五二五、六一九合であるから右石数に対応する仕込本数の一〇、七本で割つて算出される。)であるから、この数値に前述した本件計算期間中の仕込本数二二五・五本を掛ければ一、一〇七、六五六となり、右期間中に蒸溜された純アルコール石数は全部で一、一〇七、六五六合と推認される。

<3> 昭和三二年一月三一日および昭和三三年六月三〇日現在で原告梅軒が所持していた酒類の純アルコール石数の計算は前述((六)の(1)のロの<3>)と同方法である。

第六被告の本案に関する主張に対する原告らの認否および反論

一  本案に関する主張一について

1  同一の1ないし4、6および8ないし11は認める。

2  同一の5のうち、被告が申告内容について調査を行つたこと、原告梅軒が過少申告をしたこと、酒税調査決定通知が酒税法二五条一項によりなされたものであることは争い、その余  は認める。

3  同一の7中、連帯納付義務のあることは争い、その余は認める。

二  同二について

1  同二の1について

(一) 1の(一)中、原告梅軒が被告主張の製造免許を受け、被告主張の製造場において被告主張の機械を設置して原料用アルコールを製成し、これを原料として合成清酒第二級(アルコール分一五度)を製造し移出販売していたことは認め、その余は争う。

(二) 1の(二)は争う。

2  同二の2について

(一) 2の(一)について

(1) (一)の(1)中、広瀬新一が原告梅軒の従業員であつたことならびに別表第三の総務部長、庶務課長、庶務主任、販売課長および販売事務主任の地位にあつたことは否認し、その余は認める。

(2) (一)の(2)および(3)は認める。

(二) 1の(二)について

(1) (二)の(1)は認める。

(2) (二)の(2)中、被告のいる島田税務署と原告梅軒との間が六里ほどあり、東海道本線にて島田から藤枝へ出て軽便電車に乗りかえることとなるので片道約一時間半を要する距離にあつたことは認め、その余は争う。

(三) 2(三)中、(1)は認め、(2)は争う。

(四) 2の(四)、(五)および(六)は争う。

3  同二についての原告の反論

(一) 被告より原告梅軒に対する酒税調査決定通知書は昭和三四年七月二九日付のものであるから、同書にいう「梅軒の酒税法違反嫌疑事件についての調査」とは、実際には国税局収税官吏による原告谷崎および広瀬にかかる事件についての調査またはその調査にもとづく被告の調査を意味するものと考えられるが、それならば、その調査によつて集取された証憑は乙号各証中遅くとも右通知書の日付日以前に顕われたものであるはずであり、同日より後に顕われたものは、捜査・公判の各段階におけるものも含めて全て酒税調査決定をなすうえで証憑とはされなかつたはずである。

(二) また、右通知書の日付日以前に顕われた証憑の中でも、<証拠省略>の質間てん末書は、国税局の調査のうえで一応原告梅軒に対しても酒税法違反嫌疑事件が立件されたようではあるものの、検察官に対する告発が原告谷崎および広瀬についてのみ行われ、原告梅軒に対しては告発はおろか通告処分もなかつたことからして、国税局による調査の結果原告梅軒自体には嫌疑事実が認められないとして原告梅軒についての調査は国税局限りで罷んだものと推測されるから、実質的には原告谷崎および広瀬についての嫌疑事件について作成されたものというべく、被告としては、それを承けて原告梅軒についての調査資料とすることはできなかつたものというべきである。殊に<証拠省略>の質問てん末書は、原告谷崎らにかかる事件が告発により検察官に引継がれた後に国税局収税官吏によつて検察庁で行われた質問の結果作成されたものであつて、その時期および場所に照らし、収税官吏としての正当な調査活動により集取されたものとは考えられない。

(三) そして、乙号各証中の増田メモおよび坂本日誌は、すべて原告谷崎らにかかる事件の告発に伴い同事件の証憑として検察官に引継がれたうえ、その記載内容の真否をめぐつて右事件の捜査・公判の各段階における事案究明の努力の殆どが費されたのであるから、乙号各証中の検察官調書や公判調書などの多くはこれをめぐつての証拠というべきであつて、告発以前に集取された証憑に対して特に新規の証憑を付加したものとはいえないから、右事件の刑事判決において増田メモおよび坂本日誌の証拠価値が否定された以上、本件においても同様の価値判断を受くべきものと考えられる。

(四) さらに、被告は増田メモと法定帳簿とが符合すると主張するが、その主張自体において認めているように、右メモの記載内容には一部符号しない箇所があり、少くとも増田メモがその記載どおりには信憑されえないことは明らかである。

(五) いずれにせよ、本件各処分は、増田ら従業員によつて原告谷崎および広瀬の両名を梅軒から排除するため捏造された右両名にかかる犯則ないし刑事事件に被告が誤まらされて行つた無根拠の処分にほかならない。それを被告は本件においてあくまで合理的に筋立てしようとするが、被告の主張のすべては右刑事事件で排斥された証拠にもとづくか、または仮設の公式に当てはめた単なる計算上の理論値にもとづく独断的推論にほかならない。

第七証拠<省略>

理由

第一書証の形式的証拠力に関して

原告らは、第四四および第四五回準備手続期日において、被告提出の<証拠省略>の成立を認める旨陳述し、その後第五〇回準備手続期日において、右陳述は錯誤によるものであるとして、これを不知と変更する旨陳述した。

右は、書証の成立についての自白の撤回に該当するから、被告が右撤回に異議を述べている本件においては、原告らは、右乙号各証について、錯誤により真実に反してその成立を認める旨陳述したことを証明しない限り、右認否を変更することができないものと解すべきところ、本件全証拠によつても、原告らが右乙号各証について錯誤により真実に反してその成立を認める旨陳述したものとは認められない。

のみならず、右乙号各証のうち、<証拠省略>は、その方式および趣旨によつて公務員が職務上作成したものと認められるから、真正な公文書と推定すべきところ、右推定を覆するに足る証拠はなく、また、<証拠省略>によつて真正に成立したものと認められる。

よつて、右乙号各証は、いずれも形式的証拠力を具備しているものというべきであるから、以下の判文中においては、特にその旨を判示することなく、形式的証拠力を有する書証として取扱うこととする。

第二処分の概要および不服申立の概要について

被告の本案に関する主張一のうち、左記1ないし11の各事実については当事者間に争いがない。

1  原告梅軒は、昭和二三年五月一二日設立された酒類の製造・販売を目的とする会社で、静岡県榛原郡相良町堀野新田五七〇番地の一に本店および酒類製造場を有し、被告から合成清酒および焼酎についてその製造および販売の免許を受け、右免許酒類の製造販売を営んでいたが、昭和三四年五月一五日解散し、爾後は清算の目的の範囲内で存続しているものであること

2  原告栗林、同鈴木、同竹中、同谷崎および同相川は、原告梅軒が解散するに際し、清算人に就任して原告梅軒の清算事務を掌つたものであること

3  原告萩原、同谷崎吉輝および同池守は、昭和三四年五月当時原告梅軒の株式を有していたもので、昭和三四年七月二五日開催された株主総会決議により一株当り一八円七〇銭あてそれぞれ次表のとおり保有株式数に応じ残余財産の分配として金員の分配を得たものであること

原告氏名

保有株式数

残余財産分配数

萩原平吉

一、一〇〇株

二〇、五七〇円

谷崎吉輝

七、四五〇株

一三九、三一五円

池守儀信

二〇、〇〇〇株

三七四、〇〇〇円

4  原告梅軒は、昭和三二年二月分ないし昭和三三年六月分の酒税課税標準石数を酒税法二四条一項の規定にもとづき別表}のB欄記載のとおりそれぞれ法定申告期限内に被告に申告したこと

5  被告は、昭和三四年七月二九日、原告梅軒に対し、酒税調査決定通知書を送達することにより、原告梅軒の課税標準石数が別表一のA欄記載のとおりである旨を通知し、かつ納期限を同日午後〇時三〇分と指定した納税告知書を右酒税調査決定通知書と同時に送達したこと

6  原告梅軒は、その納期を経過しても右酒税を納付しなかつたので、被告は、旧国税徴収法四条ノ四の規定により、原告梅軒が昭和三四年七月二五日の残余財産分配決議当時有していた現金七、四八〇、〇〇〇円の分配の任にあつた清算人である原告栗林ら五名において残余財産の分配額七、四八〇、〇〇〇円を限度として連帯して納付する義務があると認め、次表のとおり納付通知書を送達したこと

清算人氏名

通知日付

納付すべき金額

納付期限

栗林藤蔵

三四・七・三一

七、四八〇、〇〇〇

三四年七月三一日

午後二時四〇分

鈴木忠次郎

三四・七・三一

七、四八〇、〇〇〇

三四年七月三一日

午後一時四五分

谷崎吉太郎

三四・八・一

三四年八月三日

午前一〇時

竹中寛

三四年八月五日

相川龍蔵

7  被告は、右残余財産について一株当り一八円七〇銭あてその保有株式数に応じ財産の分配として金員を得たもののうち、原告萩原、同谷崎吉揮、同池守ほか一五名に対しても、旧国税徴収法四条ノ四の規定により、その分配を受けた財産の価額を限度として連帯して納付する義務があると認め、昭和三四年九月二一日、その旨の納付通知書を送達したこと

8  原告らは、6、7で述べた納付通知書による催告にもかかわらず、納付をしなかつたので、被告は、まず、原告栗林、同鈴木の財産について昭和三四年七月三一日から同年一〇月二七日までの間にそれぞれ別紙差押処分目録(一)、(二)記載のとおり差押を行つたうえ、原告谷崎に対しては、同目録(四)記載のとおり、同人が昭和三四年八月三日現在で焼津信用金庫藤枝支店に有していた普通預金四〇、七八五円を差押えたが、その余の財産が被告管轄地域外である富山県西礪波郡にあることが判明したので、昭和三四年八月四日、旧国税徴収法三一条の規定にもとづき、前記地域を管轄する礪波税務署長に滞納処分の引継ぎを行い、同税務署長は、原告谷崎の財産について昭和三四年八月二一日および昭和三五年六月六日差押を行つたが、原告竹中に対しては、同人の財産がいずれも被告管轄地域外である石川県加賀市にあつたので、昭和三四年八月四日同市を管轄する小松税務署長に滞納処分の引継ぎを行い、同税務署長は、原告竹中の財産について昭和三四年八月一〇日同目録(三)記載のとおり差押を行つたこと

9  原告梅軒は、昭和三四年八月三日請求の趣旨一の1記載の各処分を不服として、被告に対し、旧国税徴収法三一条ノ二第一項により再調査の請求をし、その後昭和三四年一〇月三日右再調査請求は旧国税徴収法三一条ノ三第三項の規定による同意によつて名古屋国税局長に対する審査の請求とみなされることになつたが、同国税局長は昭和三五年一〇月一七日付で右審査請求を棄却する旨の決定をしたこと

10  原告栗林、同鈴木は、昭和三四年八月三日付で前記6で述べた納付通知および前記8で述べた差押のうち、原告栗林にかかる昭和三四年七月三一日付有体動産の差押処分および原告鈴木にかかる昭和三四年七月三一日付有体動産の差押処分を不服として、また、原告谷崎、同竹中および同相川は、昭和三四年八月五日付で前記6で述べた納付通知を不服として、それぞれ被告に対し、旧国税徴収法三一条ノ二第一項により再調査の請求をしたところ、右各原告らの再調査請求は、原告栗林および同鈴木については昭和三四年一〇月五日に、同谷崎については同年一一月九日に、同竹中については同月七日に、同相川については同年九月二五日に、それぞれ旧国税徴収法三一条ノ三第三項に規定する同意によつて名古屋国税局長に対する審査の請求とみなされることになつたが、同国税局長は昭和三五年九月二一日右各審査請求を棄却する旨の決定をしたこと

11  前記7で述べた納付通知書の送達を受けた者のうち、原告萩原は昭和三四年九月三〇日付で、同谷崎吉揮および同池守は同日付で、それぞれ右納付通知を不服とする再調査の請求をしたが、被告は、同年一二月一一日いずれもこれを棄却する旨の決定をしたところ、右各原告らからその後旧国税徴収法一三条ノ三第一項に規定する審査の請求が行われた事実はないこと

第三各原告の訴えの適法性について

一  請求の趣旨一の1の請求について

本請求は、第二の9に前述したように、原告梅軒の被告に対する再調査の請求が昭和三四年一〇月三日に各古名屋国税局長に対する審査の請求とみなされることとなつた後三箇月を経過しても審査の決定がなされなかつたため、旧国税徴収法三一条ノ四第一項但書により、審査の決定を経ることなく原告梅軒によつて提起されたものであるから、適法というべきである。

二  請求の趣旨一の2および3の請求について

本請求は、旧国税徴収法四条ノ四第一項所定の第二次納税義務者である原告萩原、同谷崎吉揮、同池守、同栗林、同鈴木、同竹中、同谷崎、同相川が、右各原告に対する各納付通知の取消しを求める訴えである。

しかし、旧国税徴収法四条ノ四第一項所定の納税義務は、法人が解散をした場合において、清算人が法人の未納の国税等を納付することなく残余財産の分配または引渡しをした事実の発生によつて法律上当然に成立するものであつて、同法四条ノ六所定の同族会社または同法四条ノ七所定の財産譲受人の納税義務のように、主たる納税義務者(本件の場合には梅軒)の財産が徴収しようとする税額に不足することをその成立要件としていないのであるから、同法四条ノ四第一項の清算人および残余財産の分配を受けた者に対しては、同項所定の要件さえみたせば、同法四条ノ六所定の同族会社または同法四条ノ七所定の財産譲受人に対する場合のように納付通知書を発付することを要せず、また主たる納税義務者である解散法人の履行遅滞をも必要とせず、直ちに納付を求めまた滞納処分をすることができるものと解すべきであり(立法論としては妥当性に疑問があり、現行国税徴収法三二条は、第二次納税義務者からの徴収一般につき納付通知書による告知を必要とするに至つた。)、右各原告らに対する各納付通知は、行政手続の妥当性の見地から、国税徴収法施行細則(明治三〇年大蔵省令一〇号)七条一項所定の納付通知書に準じた納付の通知として発せられたものといわなければならず、法律にもとづき、第二次納税義務者に対し、その義務額を具体的に確定する行政処分としてなされたものということはできない。

なお、現行国税徴収法(以下「新法」という。)附則二条は、同法の施行(昭和三五年一月一日)前に旧国税徴収法(以下「旧法」という。)の規定またはこれにもとづきもしくはこれを実施するための命令の規定によつてした通知、告知、督促、滞納処分、徴収猶予、担保の徴取、滞納処分の執行の停止または申告、申請、証明、納付委託、再調査の請求もしくは審査の請求その他の処分または手続は、この附則に別段の定めがあるものを除き、新法の相当規定によつてした相当の処分または手続とみなす、と定めているが、右規定は、旧法施行当時旧法にもとづく行政処分としての性質を有していた課税庁の行為に新法にもとづく行政処分としての効力を付与することを趣旨とした規定であつて、旧法施行当時旧法にもとづく行政処分としての性質を有しなかつた課税庁の行為を新法にもとづく行政処分とみなすことを趣旨とするものではない、と解すべきであり、この解釈は、新法附則七条が、同法三二条一項(第二次納税義務の告知等)、三五条から三九条まで(同族会社等の第二次納税義務)ならびに四一条二項および三項(人格のない社団等にかかる第二次納税義務)の規定は、新法の施行後に滞納となつた国税について適用し、新法の施行前に滞納となつている国税にかかる第二次納税義務の額およびこれを課する手続については、なお従前の例による、と定めている趣旨にも沿うものであるところ、原告梅軒を除くその余の原告らに対する請求の趣旨一の2および3記載の各納付通知は、いずれも旧法施行当時になされたものであり、前述のとおりその当時には行政処分としての性質を有しなかつたものであるから、新法の施行によつて右各納付通知が新法にもとづく行政処分としての性質を有するに至つたものと解することもできない。

結局、右各納付通知の取消しを求める右各原告らの訴えは、対象となるべき行政処分が存在しないために、不適法というべきであるから、却下を免れない。

三  請求の趣旨一の4の請求について

1  原告栗林に対する別紙差押処分目録(一)記載の各差押処分のうち、昭和三四年八月三日付不動産の差押処分に対して旧国税徴収法三一条ノ二所定の再調査の請求および同法三一条ノ三所定の審査の請求がなされた事実のないことは当事者間に争いがなく、かつ本件全証拠によつても同法三一条ノ四第一項但書所定の「正当ナル事由」の存在は認められないので、右差押処分の取消しを求める訴えは、不適法である。

また前記各差押処分のうち、昭和三四年八月四日付不動産の差押処分ならびに不動産以外の有体動産および債権についての差押処分は、左記のとおり既に差押が解除され、あるいは債権の取立ておよび充当により差押手続が終了していることが弁論の全趣旨および当裁判所の職権調査の結果により認められるので、右各差押処分の取消しを求める訴えも、不適法である。

記<省略>

よつて、原告栗林の別紙差押処分目録(一)記載の各差押処分の取消しを求める訴えは、すべて却下を免れない。

2  原告鈴木に対する別紙差押処分目録(二)記載の各差押処分のうち、昭和三四年八月四日付不動産の差押処分に対して旧国税徴収法三一条ノ二所定の再調査の請求および同法三一条ノ三所定の審査の請求がなされた事実のないことは当事者間に争いがなく、かつ本件全証拠によつても同法三一条ノ四第一項但書所定の「正当ナル事由」の存在は認められないので、右差押処分に対する取消しの訴えは、不適法である。

また前記各差押処分のうち、昭和三四年八月三日付不動産の差押処分ならびに不動産以外の有体動産および債権についての差押処分は、左記のとおり既に差押が解除され、あるいは債権の取立ておよび充当により差押手続が終了していることが弁論の全趣旨および当裁判所の職権調査の結果により認められるので、右各差押処分の取消しを求める訴えも、不適法である。

記<省略>

よつて、原告鈴木の別紙差押処分目録(二)記載の各差押処分の取消しを求める訴えはすべて却下を免れない。

3  原告竹中に対する別紙差押処分目録(三)記載の、原告谷崎に対する同目録(四)記載の各差押処分に対して、旧国税徴収法三一条ノ二所定の再調査の請求および同法三一条ノ三所定の審査の請求がなされた事実のないことは、当事者間に争いがなく、かつ本件全証拠によつても同法三一条ノ四第一項但書所定の「正当ナル事由」の存在は認められないので、右各差押処分に対する取消しの訴えは、不適法であり、却下を免れない。

四  請求の趣旨二の請求について

本請求は、本件各原告の納税義務の存在しないことの確認を求める訴えであるが、かかる訴えは、公法上の権利関係に関するいわゆる当事者訴訟にほかならず、権利の帰属主体でない課税処分庁は被告としての当事者適格を有しないものと解すべきであるから、島田税務署長を被告とした点において被告を誤つたものといわなければならず、また本請求は、行政事件訴訟法四〇条二項所定の「出訴期間の定めがある当事者訴訟」に該当しないから、同法一五条を準用して、被告を権利の帰属主体である国に変更する余地もないといわなければならないので、結局その不適法性を治癒するに由なく、却下を免れない。

第四本件酒税調査決定および本件納税告知の手続的適法性について

一  原告らは、原告梅軒に対する酒税調査決定(以下「本件酒税調査決定」という。)は、被告により原告梅軒にかかる酒税法違反嫌疑事件が立件されておらず、従つて右事件において被告により調査が行われていないから、その基礎となるべき調査を欠き、酒税法二五条に違反する、と主張するが、<証拠省略>によれば、原告梅軒に対する酒税法違反嫌疑事件は、当初東京国税局収税官吏によつて認知され、昭和三四年四月一八日に名古屋国税局収税官吏に引継がれた後、同局収税官吏唐木宗良らによつて証憑の集取が行われ、同年七月二三日に、同局収税官吏山口二郎によつて静岡地方検察官に告発されていることが認められ、また<証拠省略>によれば、被告は、右証憑の集取に協力するとともに、右収税官吏より送付された調査資料をもとに、同月二九日、本件酒税調査決定をしたことが認められるところ、国税犯則取締法にもとづく国税に関する犯則事件の調査は、酒税法二五条一項にもとづく課税標準石数の調査を兼ねうるものであり、しかも、このことは、犯則事件の調査が課税標準石数の決定庁である税務署長によつてではなく、国税局の収税官吏によつて行われた場合にも同様であると解すべきであるから、被告が名古屋国税局収税官吏による犯則事件の調査によつて得られた資料をもとに本件酒税調査決定を行つたことには何ら手続的な違法性はないものというべきであり、原告らの前記主張は理由がない。

二  また原告らは、原告梅軒に対する納税告知(以下「本件納税告知」という。)は、昭和三四年七月二九日一一時三〇分付納税告知書をもつて納期限を同日一二時三〇分と定めてなされた点において、納税猶予期間が余りに短かい違法がある、と主張するけれども、本件納税告知がなされた当時既に原告梅軒が解散して清算法人となつていたことは当事者間に争いがないのであるから、本件納期限は旧国税徴収法四条ノ一第六号所定のいわゆる繰上徴収にかかる納期限と解すべきであり、かかる納期限は、納税告知が納税義務者に対してなされた後納付行為という事実当為をなすのに必要かつ最小限の期間を置いて定められていれば足るものと解すべきであるところ、<証拠省略>によれば、本件納税告知書は、本件納期限の二七分前である昭和三四年七月二九日一二時三分に原告梅軒の清算人である鈴木忠次郎に送達されており、かつその文言上納付場所として日本銀行本店、支店、代理店、歳入代理店、管内郵便局または税務署が指定されていたことが認められるから、本件納税告知書記載の納期限は納付行為に必要かつ最小限の期間を置いて定められたものということができ、繰上徴収にかかる納期限として適法というべきであるから、原告らの前記主張も理由がない。

第五本件酒税調査決定の実体的適法性について

一  被告の本案に関する主張二のうち、左記の各事実については、当事者間に争いがない。

1  原告梅軒は、被告から合成清酒および焼酎甲類の製造を本店所在地と同一の静岡県榛原郡相良町堀野新田五七〇番地の一所在の製造場において行う免許を受け、右製造場において酒類原料用アルコールの製造機械である連続式蒸溜機等を設置して原料用アルコールを製成し、これを原料として合成清酒第二級(アルコール分一五度)を製造し移出販売していたこと

2  原告梅軒は、従業員数四〇名程度の小規模な会社であるが、その機構を大別すれば事務所と工場にわかれており、昭和三二、三年ごろの人的構成を表にすると別表三のとおりであること(但し、広瀬新一が原告梅軒の従業員であることならびに同人が総務部長、庶務課長、庶務主任、販売課長および販売事務主任の地位にあつたことを除く。)

3  工場における各課のうち、主な課の仕事の内容は次のとおりであること

(一) 酒精課(酒精部と称されていたこともあつた。)

甘藷等の原料から蒸煮機、連続式蒸溜機によつて酒類原料用アルコールを製造するところ。

(二) 酒造課(合成部と称されていたこともあつた。)

酒精課で製造された酒類原料用アルコールから合成清酒および焼酎を製造し、製造されたこれらの酒類をびんやかめに充填するところ。

(三) 機関課(機関部と称されていたこともあつた。)

蒸煮機、蒸溜機等に蒸気を送りこみ、かつ右機械の管理をするところ。

(四) 工場事務課

原材料、容器類、製品の引取り、保管、出荷をするとともに、酒税法に規定された正規帳簿を作成し、税務署に対し必要な諸申告、申請をするところ。

4  増田、水井、植松の担当する職務内容は次のとおりであること。

(一) 増田与重

酒造課長として、酒類の製造についての責任者であるとともに、工場事務課長(兼工場事務主任兼税務主任)として酒類の出荷、保管、原材料の入荷引取り、保管の監督をし、酒類の製造・移出の総体を掌握する者として酒税検査に立会い、かつ、酒税法の規定による諸帳簿の記帳および酒税法上の諸申告申請を行つていた。

(二) 水井喜平

仕込主任(別名製造主任)、香味液主任として酒類原料用アルコールから合成清酒および焼酎甲類の製造を行つていたほか、原告梅軒は小規模な会社で人手不足でもあつたので、出荷業務を手伝うこともあつた。

(三) 植松文雄

詰場主任、香味液主任として製造された合成清酒および焼酎甲類をびんやかめに詰め、かつ倉庫主任としてこれらの酒類の保管、出荷に従事していた。

5  原告梅軒における酒類の通常の製造方法は次のとおりであること

(一) 酒類原料用アルコール

原告梅軒が製告販売する合成清酒、焼酎甲類は、生甘藷その他を原料として製成されるアルコールから作られるが、右アルコールは、澱粉質原料である甘藷その他の原料を蒸煮機で蒸煮し、糖化機で糖化させたうえ、醗酵槽でアルコール醗酵させて作られたアルコールもろみを連続式蒸溜機にかけて蒸溜して製成されていたものである。

(二) 合成清酒

合成清酒は、前記酒類原料用アルコールを原料とし、これに水およびぶどう糖、水飴、ソルピツト、グルタミン酸ソーダ、コハク酸その他の決定原料を添加して作られるものであり、原告梅軒においては右方法により作られた合成清酒を一升びんまたは一斗かめ等の容器に充填し、「梅正宗」という商標により販売していた。

(三) 焼酎甲類

焼酎甲類は、前記酒類原料用アルコールを水と混和させて作られるものであり、原告梅軒においては右方法により作られたものを一升びんまたは一斗かめ等の容器に充填し「梅軒」という商標により販売していた。

6  原告梅軒における酒類の通常の移出方法は次のとおりであること

原告梅軒が酒類を製造場から移出販売する場合には、事務所の販売係横山喜一が出荷伝票(三部複写のもの)を起票し、これが工場長沢入竜起から製造課長増田与重を経由して倉庫係である植松文雄または水井喜平に渡され、倉庫係は、その出荷伝票に従つて酒類の移出を行つていた。

移出が終つたあとの伝票は、一日の作業終了後、倉庫係から増田与重のところへ回付され、増田はこのうち一枚を手元に残すとともに他の二枚を工場長に回付し、工場長からそのうち一枚が起票者である横山喜一に返還されるしくみとなつていた。

増田与重は、手元に残した伝票により酒類売上帳(乙第六〇号証)を記帳し、記帳済みとなつた伝票は別途に編綴して保管していた。

右酒類売上帳は、酒税法四六条(記帳義務)の規定より記帳されていたものであり、酒税法二四条(移出石数等の申告)の規定による課税標準石数等申告書は、右酒類売上帳によつて作成されていたものである。

二  本件酒税調査決定の構造

1  <証拠省略>によれば、本件酒税調査決定は、被告が、その調査により、原告梅軒が、昭和三二年二月ないし同年一二月分、昭和三三年五月および同年六月分の合成清酒第二級ならびに昭和三二年四月分および同年七月ないし同年一二月分の雑酒第二級について、被告の本案に関する主張二の1の(二)の(3)の表(以下「本件移出表」と呼ぶ。)記載のとおり移出販売を行いながら、それを被告に申告しなかつたものと認めたうえ、これを課税標準石数と決定したものであることが認められる。

2  そして、本件移出表記載の酒類の移出は、いずれも、大洋酒類もしくは昭和酒販に対する合成清酒第二級および雑酒第二級(九六度)の移出として被告により認定されたものであることは、同表の記載および<証拠省略>によつて明らかである。

3  従つて、本件酒税調査決定は、本件移出表記載の時期に、同表記載の種類および級に該当し、同表記載のアルコール分を有する酒類が、同表記載の数量だけ大洋酒類または昭和酒販に移出された事実ならびに右移出数量のすべてが原告梅軒の同時期における申告移出数量に含まれていない事実の認定にもとづいた、いわゆる実額課税であつて、同時期における原告梅軒の酒類原料の使用状況、ボイラーの燃焼時間等の資料にもとづいた、いわゆる推計課税でないことは明らかである。

4  ところで、酒税法六条一項は、酒類の製造者は、その製造場から移出した酒類の石数に応じ、酒税を納める義務がある、と定め、一定数量の酒類がその製造場から移出されたことを、酒税の課税要件事実として必要かつ十分なものとする課税原理をとつている。

そして、同法二二条は、移出された酒類の種類別、類別、級別およびアルコール分に応じ、一石当りの課税金額を定めている。 従つて、同法二五条一項にもとづいて課税標準石数を決定するためには、移出された酒類の種類別、類別、級別およびアルコール分ごとに移出数量を把握しなければならない。

また、「移出」は、当該製造場から外部へ一定の成分と体積を有する液体を物理的に移動することを意味するから、右移動を行うのに使用された人的および物的手段ならびに右移動にかかる液体の成分と体積を把握することも、課税標準石数の決定に必要となつてくる。

このようにみてくると、ある酒類製造者の課税標準石数を当該酒類製造者が同法二四条一項にもとづいて提出した申告書にもとづかないで決定することは、同法の採用する単純な課税原理にもかかわらず、相当に困難であることが判明する。

もとより、酒税は、その製造場からの酒類の移出という具体的事実にもとづいて課せられるものであるから、酒類移出の事実それ自体は、証拠によつて具体的に認定されなければならない。

しかしながら、酒類製造者が、申告書に記載した移出数量を相当程度超えた数量の酒類を移出しているような場合において、右酒類製造者が右超過部分の移出事蹟を酒類売上帳等の法定の帳簿に記帳していないような場合(以下「簿外移出の行われている場合」という。)においては、右移出事蹟を課税庁が具体的に認定することは、一般に極めて困難といわなければならず、個々の移出事蹟をその日時・数量を特定して具体的に認定することは、課税庁の職員が当該製造場に常駐してすべての移出に立会うなどしない限り、事実上不可能に近いといわなければならない。

そして、このような徴税職員の常時の立会いが徴税技術上および徴税経済上不可能であることは、社会通念に照らして明らかである。

しかしながら、簿外移出の行われている場合に、簿外移出を行つている酒類製造者が、単に個別的な移出事蹟の日時・数量が完全に明確に認定されないというだけの理由で簿外移出にかかる酒類のすべてについて課税を免れることは、課税の公平の理念からして到底容認しがたい。

ここにおいて、酒税法の採る実額課税の原則と課税の公平の理念を調和させるためには、簿外移出の行われている場合においては、右個別的な移出事蹟を相当程度具体的かつ直接的に認めるに足る資料が存すれば、これと他の間接的な移出数量の認定資料とを対比して、両者の間の矛盾の有無を検討し、その間に著しい矛盾がなければ、前者によつて認められる個別的な移出事蹟を正当なものとして認容し、これにもとづいて課税標準石数の決定処分の実体的な適法性を判断することが許される、という考え方をとるほかはない。

このような考え方に対しては、推計課税を許す規定のない酒税法の分野に推計課税の方法を適用するものである、との批判もありうるが、所得税法等の規定する推計課税は、納税義務者の財産もしくは債務の増減の状況、収入もしくは支出の状況または生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模等間接的な認定資料のみによりその者の各年分の各種所得の金額または損失の金額を総額として推計し、これにもとづいて更正または決定をすることを許す制度であるのに対し、前記の考え方は、右のような間接的な認定資料によつて総量としての酒類の移出数量を推計しつつも、窮極的には直接的な認定資料によつて酒類の相当程度具体的な移出事蹟を認定し、これにもとづいて課税標準石数を決定しようとするものであるから、前記のような批判は必ずしも当を得ない。

5  そこで、以下項を改め、前記の考え方に立脚して本件酒税調査決定の実体的な適法性に検討を加えることとする。

三  原告梅軒に簿外移出の事実はあつたか

1  <証拠省略>を総合すると、次の事実が認められる。

(一) 原告梅軒においては、昭和三〇年一一月ころから、法定帳簿である酒類売上帳に記帳されず、酒税法二四条一項所定の申告書記載の移出数量に含まれない酒類の移出がしばしば富山方面に向けて行われるようになり、この状況は、原告梅軒において労働争議が頻発するようになつた昭和三三年秋ころまで続いていた。

(二) 右不申告酒類の移出についても、前記一の6と同様に、事務所の販売係横山が出荷伝票(三部複写のもの)を起票し、これが工場長沢入から製造課長増田を経由して倉庫係である植松または水井に渡され、倉庫係は、その出荷伝票に従つて酒類の移出を行い、移出が終つたあとの伝票は、一日の作業終了後、倉庫係から増田与重のところへ回付され、増田はこのうち一枚を手元に残すとともに他の二枚を工場長に回付し、工場長からそのうち一枚が横山に返還されていたが、右伝票は、通常の移出においては記載されていた単価および金額が記載されておらず、数量のみが記載されており、全体として社撰な印象を与えるものであつたため、増田は右伝票により指示された移出が不申告分であることを容易に知ることができた。

(三) 増田は、右伝票のうち自己の手元に残つた一枚を酒類売上帳に記帳することなくこれに挾んでおいたり、また一応これに記帳したうえ破棄しておいたりし、後日右不申告数量に相当する酒類が製造され、在庫数量が補充されたところで、酒類売上帳に挾んでおいた伝票を破棄したり、また右一応の記帳がなされた酒類売上帳(ルーズリーフ式になつている。)の当該一葉を全部破棄して新たに右一応の記帳にかかる移出事蹟の記載されない一葉を書直したりしていた。

(四) 右在庫補充に必要な酒類原料用アルコールは、沢入、増田、植松、水井らが、夜間、検定タンク(約三一石の原料用アルコールを貯蔵することができる。)の出口に付属した三連のバルブの各上部に取付けられた三個の円型ハンドルの中心にあるナツトを外し、針金で相互に連結することによつて封印されている右三個の円型ハンドルを連結されたまま各バルブから一度に抜取ることによつて右検定タンク内のアルコールを流出させ、また流量計(原料用アルコールの度数および温度を測定するため、連続式蒸溜機と中受けタンクとの間において一時アルコールを貯溜しておく小型のタンク)の出口にあるバルブを閉じ、右流量計の上部に付属した空気抜き用の管からアルコールをあふれ出させる、という方法によつて、被告の検定を受けることなく採取されていた。

(五) 増田は、右採取された原料用アルコールを製成するのに必要な生甘藷等の澱粉質原料の受入事蹟を法定帳簿である原料受払帳に記帳しないよう調整していた。

2  原告らは、原告梅軒には前記1のような事実は全くなかつた旨主張し、<証拠省略>にはこれに沿う記載部分があり、また<証拠省略>中にはこれに沿う供述部分があるけれども、右各部分は、他の関係証拠に照らして措信し難く、他に前記認定を覆すに足る証拠はない。

3  してみれば、原告梅軒には、本件計算期間である昭和三二年二月一日から昭和三三年六月三〇日までの間、簿外移出が行われている場合に該当する状態が存続していたものというべぎである。

4  そこで、次に、個別的な簿外移出事蹟を相当程度具体的かつ直接的に認めるに足る資料が存するか否かにつき検討を加えることとする。

四  簿外移出事蹟を相当程度具体的に認めるに足る資料は存するか

1  <証拠省略>によれば、原告梅軒において酒造課長、工場事務課長、工場事務主任および税務主任を兼務し、酒類の製造、出荷および酒税法関係諸手続についての責任者をしていた増田与重は、出荷および製品在庫について管理するため毎日の出荷数量および製品の在庫について、メモ帳三冊(乙第九号証の一の一、同号証の一の二ないし一二の各一、同号証の一の一三、同号証の一の一四ないし二二の各一、同号証の二の一、同号証の二の二ないし二三の各一、同号証の二の二四、同号証の三の一、同号証の三の二ないし二九の各一および同号証の三の三〇。以下「乙第九号各証」と総称する。)ならびに雑記帳一冊(乙第八号証の一、二、同号証の三の一、同号証の四ないし一六、同号証の一七ないし三一の各一および同号証の三二ないし四〇。以下「乙第八号各証」と総称する。)にその数量を記載していたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

2  メモ帳三冊の記載内容および作成経緯

<証拠省略>を総合すると、

(一) メモ帳三冊は、増田与重が常時これを携帯し、昭和三二年一月二五日から昭和三三年七月一四日までの間における原告梅軒の酒類の移出事蹟を、移出先別または取扱者(販売員)別に酒類の種別(合成清酒第二級、焼酎甲類または酒類原料用アルコール)および販売用容器の種類(一合びんまたは一斗かめ)別の移出本数を左記の記号等を用いて毎日記載することにより、記録していたものであること

記<省略>

(二) 原告梅軒においては、一の6に前述したように、酒類移出が終わつたあとの出荷伝票は、一日の作業終了後、倉庫係の植松文雄または水井喜平から増田与重に回付されていたが、三に前述しよように、原告梅軒が簿外移出をも行つていたことから、税務主任の増田において酒類の製造、移出および在庫等の実態を正確に把握しておく必要があつたため、植松または水井は、便宜メモ紙に酒類の種別および容器別の毎日の詰口本数、在庫本数および取扱者別に再区分された移出本数ならびに当日使用された容器やレツテル等の数量を記載し、これを一日の作業終了後、前記出荷伝票とともに増田に回付し、増田は、右出荷伝票および右メモ紙にもとづいて毎日前記メモ帳三冊に前記(一)の記載を行つていたものであること

(三) 昭和三二年五月二七日ころ名古屋国税局により原告梅軒に対し本件とは別の酒税法違反嫌疑事件を調査するため質問、検査または領置が行われたことから、増田与重は、前記メモ帳三冊を携帯していることにより本件が発覚することを怖れ、同年六月二日から同月二三日までの間これを携帯しなかつたため、同期間中右メモ帳には前記(一)の記載が行われなかつたことの各事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

3  雑記帳一冊の記載内容および作成経緯

<証拠省略>を総合すると、

(一) 雑記帳一冊は、増田与重が自宅にこれを保管し、昭和三一年二月六日から昭和三二年一二月七日までの間における原告梅軒の酒類の移出事蹟を、酒類の種別(合成清酒第二級または焼酎甲類)および販売用容器(一升びんまたは一斗かめ)別の毎日の詰口本数、合計移出本数および在庫本数を左記(1)ないし(5)の記号を用いて記載することにより、記録していたものであること

記<省略>

(二) 増田与重は、毎日前記2の(一)の事項を前記メモ帳三冊に記載した後、右メモ帳および前記2の(二)のメモ紙を自宅に持帰り、これらにもとづいて前記雑記帳一冊に前記(一)の記載を行つていたが、その主たる目的は、原告梅軒が簿外移出をも行つていたことから、原告梅軒における酒類の在庫を管理することにあつたこと

(三) 増田は、前記雑記帳に、前記(一)の事項のほか、昭和三一年二月六日から昭和三二年一二月七日までの間における原告梅軒の毎日の酒類製造に使用されたレツテル等の数量を前記2の(二)のメモ紙にもとづき左記(6)および(7)の記号を用いて記載していたこと

記<省略>

(四) さらに増田は、前記雑記帳に、昭和三一年三月七日から昭和三二年一二月七日までの間における原告梅軒の空の酒類販売用容器の回収事蹟を、移出先別または取扱者別および販売用容器の種類別に前記2の(一)の(1)および(8)ないし(12)ならびに左記(8)ないしに(10)の記号を用いて記載していたこと

記<省略>

の各事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

4  以上によれば、本件においては、簿外移出事蹟を相当程度具体的かつ直接的に認めるに足る資料として前記メモ帳三冊が、同じく相当程度具体的に認めるに足る資料として前記雑記帳一冊がそれぞれ存するものということができる。

そして、<証拠省略>によれば、右のうち、増田与重が移出先または取扱者別に酒類の移出数量を記載していたメモ帳三冊においては、本件移出表記載の酒類の移出事蹟は、次表<省略>のとおりの記号を以て記載されていることが認められる。

5  そこで、以下項を改め、まず、前記メモ帳三冊と雑記帳一冊とを対比し、ついで右メモ帳三冊と他の間接的な移出数量の認定資料とを対比して、それぞれその間の矛盾の有無およびその大小を検討することとする。

五  メモ帳三冊と雑記帳一冊との対比

1  <証拠省略>によれば、メモ帳三冊と雑記帳一冊とが期間的に重なり合う昭和三二年一月二五日から同年一二月七日までの間(但し、前記四の2の(三)に認定のとおり、メモ帳三冊の記載は、同年六月二日から同月二三日までの間、増田が右メモ帳を携帯しなかつたために、行われなかつた。)において、両者が酒類の種別において重なり合う合成清酒第二級および焼酎甲類について、各その毎日の販売用容器別の合計移出数量を、雑記帳一冊についてはその記載それ自体から、メモ帳三冊についてはその記載にかかる個別的な移出数量を合計したものからそれぞれ算出して対比すると、両者は右期間中の大半の日において完全に一致し、その余の日においては僅少な不一致の存することが認められるが、右不一致は、主として増田がメモ帳三冊に個別的な移出事蹟の一部を記載し忘れたことに起因するものと認められるから、メモ帳三冊と雑記帳一冊との数量的な一致の程度は、相当に高いものということができる。

2  また、雑記帳一冊に記載されている昭和三一年三月七日から昭和三二年一二月七日までの間における原告梅軒の空の酒類販売容器の回収事蹟のうち、本件計算期間内における大洋酒類または昭和酒販からの回収事蹟を拾い出すと、左表<省略>のとおり、メモ帳三冊に記載された本件移出表記載の酒類の移出事蹟と時期的にきわめてよく対応した回収事蹟のあることが認められ、このことは、大洋酒類または昭和酒販への本件移出表記載の酒類の移出が多くの場合大洋酒類または昭和酒販からの左表記載の空容器の回収と同一の機会に同一の輸送手段(具体的には大洋酒類または昭和酒販から来るトラツク)をもつてなされたことを推認させるものということができる。

3  以上の結果によれば、メモ帳三冊(乙第九号証)と雑記帳一冊(乙第八号各証)との間には、ほぼ完全な整合性が認められ、両者の間にはほとんど矛盾がない、ということができる。

六  メモ帳三冊と酒類売上帳との対比

1  酒類製造者は、本件計算期間当時、酒税法四六条、同法施行令(昭和二八年政令第二七号)三四条一項七号により、移出した酒類の種別ごとに、その数量、価格、移出の年月日ならびに移出先の所在地および名称を帳簿に記載する義務を負つていたところ、<証拠省略>によれば、増田与重は、原告梅軒の税務主任として、右各法条に従い、昭和三一年一〇月から昭和三二年五月二六日までの間における原告梅軒の合成清酒第二級の移出事蹟を「昭和三一酒造年度酒類売上帳・合成清酒」と題する帳簿(以下「酒類売上帳」という。)に記載していたが、酒類売上帳のうち、昭和三二年一月二一日以降の移出事蹟を記載した部分が乙第六〇号証の二ないし一二であることが認められる。

2  そして、<証拠省略>によれば、原告梅軒が被告に提出した昭和三二年二月分ないし同年四月分の酒税課税標準石数申告書(<証拠省略>)に記載された右各月分の合成清酒第二級の酒税法二二条による課税標準石数は、酒類売上帳に記載された右各月分の合成清酒第二級の合計移出石数と完全に一致していることが認められ、このことからすると、原告梅軒が被告に提出した昭和三二年二月分ないし同年四月分以外の各月分の酒税課税標準石数申告書記載の酒税法二二条による課税標準石数も、すべて原告梅軒が酒税法四六条、同法施行令三四条一項七号により作成していた法定帳簿に記載された右各月分の合計移出石数と同一の数量をもつていたものと推認される。

3  そこで、酒類売上帳のうちの前記乙第六〇号証の二ないし一二とメモ帳三冊すなわち乙第九号各証とを対比すると、前者に記載されている「移出先」の「販売場位置」が静岡県外である移出については、昭和三二年三月一五日に一升びん五〇本を神奈川県の室伏酒店に移出したことおよび同年四月九日に一升びん七〇〇本を千葉県の花妻商店に移出したことの二件を除き、すべて後者にこれに対応する記載が存在しており、また前者に記載されている「移出先」の「販売場位置」が静岡県内である移出についても、後者において取扱者名によらず移出先名により記載されているものである限り、すべて後者にこれに対応する記載が存在していることが認められ、その対応状況は別表四記載のとおりであることが認められる。

4  以上のことからみて、メモ帳三冊に記載された移出事蹟のうち、移出先名が記載されているものの大部分は、法定帳簿である原告梅軒の酒類売上帳記載の移出事蹟と時期的・数量的に一致しているものと推認することができる。

七  メモ帳三冊と坂本日誌との対比

1  証人坂本菊松の証言によれば、原告梅軒において昭和二三年から昭和三四年ころまでボイラー技師として勤務し、昭和三二、三年ころにはボイラー主任および工作主任を兼務していた坂本菊松は、ボイラー取扱者の常例に従い、同僚のボイラー技師とともに、毎日のボイラーの使用目的および使用時間ならびに毎年一回行われるボイラーの性能検査が終了した日を基準日とする当日までの延使用時間について、ボイラー日誌五冊(乙第一〇号証の一の一ないし二一、同号証の二の一ないし一三、同号証の三の一ないし三二、同号証の三の三四、同号証の四の一ないし三一、同号証の五の一ないし二一。以下「乙第一〇号各証」と総称する。)に記録を行つていたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

2  そして、<証拠省略>を総合すると、

(一) 本件計算期間当時の原告梅軒におけるボイラー技師の勤務体制は、一昼夜を八時間ごとに三分し、午前七時から始まる勤務を一直、午後三時から始まる勤務を二直、午後一一時から始まつて翌日午前七時に終る勤務を三直と呼び三交替制で行われていたこと

(二) ボイラーから各作業場への蒸気の送気は、バルブをボイラー技師が開閉することによつてなされていたが、ボイラー技師はバルブを開閉するたびにその時刻をボイラー室に備付けられた黒板に記入し、一日の作業終了後、三直の勤務者が右黒板の記載にもとづき左記の要領で同室に常備されていたボイラー日誌に記録をしていたこと

記<省略>

(三) 右のようにして記録されたボイラー日誌のうち、昭和三二年一月三一日から昭和三三年六月二三日までのボイラー使用状況を記録したものが乙第一〇号各証であること

(四) 右ボイラー日誌は、酒税法および同法施行令上特に記帳を義務づけられているものでもなく、また検査の対象となつているものでもなかつたため、坂本らボイラー技師は特にその記載内容に作為を加える必要を感ぜず、またそのような作為を加えた形跡もないことの各事実が認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。

3  なお、前記ボイラー日誌には、昭和三二年四月一一日から同月二〇日までの一〇日間の記載欄が脱漏しているけれども、<証拠省略>によれば、同月一〇日までの原告梅軒のボイラーの延使用時間は二、五九六時間であることが認められるのに対し、同じく同号証の三の二〇によれば、同月二一日までの延使用時間は、二、七二六時間であり、かつ同日の延使用時間は二二時間三〇分であることが認められるから、右脱漏した一〇日間の期間中にも、原告梅軒においては、なお合計一〇七時間三〇分ボイラーが使用され、蒸煮等の作業が行われたものと認められる。

4  そして、前提乙第一〇号各証によれば、本件計算期間のうち前記脱漏にかかる一〇日間を除く期間中に、原告梅軒のボイラーは、合計五、三四一時間蒸溜に使用されたことが認められ、このことから、原告梅軒においては、右期間中、これと同時間蒸溜が行われたことが推認される。

5  ところで、<証拠省略>によれば、

(一) 原告梅軒が使用していた連続式蒸溜機は、昭和三〇年九月ころ、従来のメル式からアロスパス式に改良され、昭和三二、三年ころにはアルコール分五・七%を含有するもろみ一〇〇石を二四時間で蒸溜し、五石七斗の純アルコールを生産することができたこと

(二) 原告梅軒は、当時、通常約一〇〇石のもろみを一仕込としていたこと

の各事実が認められる。

そこで、本件計算期間中の合計蒸溜時間五、三四一時間を一仕込の蒸溜に要する二四時間で除すれば、右期間中の仕込本数として二二二・五本が算出される。

そして、<証拠省略>によれば、前記一〇日間の脱漏期間中に、昭和三二年四月一六日、同月一八日、同月一九日の三回にわたり、それぞれ同月一二日、同月一三日、同月一四日に仕込がなされた三仕込のもろみの蒸溜が行われたことが認められるから、右三本の仕込本数を加算することにより、本件計算期間中の総仕込本数は二二五・五本であつたと推認することができる。

6  そして、<証拠省略>によれば、昭和三一酒造年度における原告梅軒の製成純アルコール石数は五二五、六一九合であり、当該年度における総仕込本数は一〇七本である旨の検査事蹟が残つていることが認められ(前述のとおり原告梅軒においては簿外移出が行われていたから、右検査に服さない仕込およびアルコール製成が行われていたものと推認されるが、その数量を正確に把握すとことは困難である。)、右検査事蹟からして、本件計算期間当時の原告梅軒における一仕込当りの製成純アルコール石数は、前記製成純アルコール石数を前記総仕込本数で除した四、九一二合であつたものと推認される。

7  そこで、右数値に前述した本件計算期間中の総仕込本数二二五・五本を乗ずると、一、一〇七、六五六合となり、これが、右期間中に蒸溜された純アルコール石数と推認される。

8  次に、本件計算期間の始期の一日前である昭和三二年一月三一日現在原告梅軒が所持していた酒類の純アルコール石数を検討すると、<証拠省略>によれば、同日現在原告梅軒が所持していた酒類原料用アルコールに含まれる純アルコール石数は、検定済みのものが一八五、六八七合、同月中に蒸溜されたが同日まで未検定であつたものが五一、六一六合、合計二三七、三〇三合であること、また同日現在原告梅軒が所持していた製品である合成清酒第二級の二〇度換算石数は、一三七、三四七合、同焼酎甲類(二五度)の石数は、一六四、八五四合であり、これら製品に含まれる純アルコール石数は、それぞれ二七、四六九合、四一、二一三合であることが認められ、以上を合計すると、本件計算期間の始期の一日前に原告梅軒が所持していた酒類の純アルコール石数は、三〇五、九八五合となる。

9  さらに、本件計算期間の終期である昭和三三年六月三〇日現在原告梅軒が所持していた酒類の純アルコール石数を検討すると、<証拠省略>によれば、同日現在原告梅軒が所持していた酒類原料用アルコールに含まれる純アルコール石数は、検定済みのものが六二、〇四三合、同月中に蒸溜されたが同日までに未検定であつたものが三、二一八合、合計六五、二六一合であること、また同日現在原告梅軒が所持していた製品である合成清酒第二級の二〇度換算石数は、一六七、〇三六合、同焼酎甲類(二五度)の石数は、一二八、三七六合、同焼酎甲類(二〇度)の石数は、七、五五〇合であり、これら製品に含まれる純アルコール石数は、それぞれ三三、四〇七合、三二、〇九四合、一、五一〇合であることが認められ、以上を合計すると、本件計算期間の終期に原告梅軒が所持していた酒類の純アルコール石数は、一三二、二七二合となる。

10  以上の結果から、本件計算期間中に酒類製造のために原告梅軒が使用した純アルコール石数は、原告梅軒が本件計算期間開始時に所持していた三〇五、九八五合に、本件計算期間中に蒸溜した一、一〇七、六五六合を加算した数量から、本件計算期間終了時に所持していた一三二、二七二合を減算した一、二八一、三六九合であると推認される。

11  ところで、メモ帳三冊の記載によれば、本件計算期間中に原告梅軒が移出した酒類の種別ごとの毎月の合計移出数量は、昭和三二年六月を除き、別表六記載のとおりであることが認められ、また昭和三二年六月については、四の2の(三)に前述した理由により同月二日から同月二三日までの間メモ帳三冊への記載が行われなかつたため、これに代えて雑記帳一冊(五に前述したようにメモ帳三冊との間にきわめて高い整合性を有している。)の同期間中の記載を用いると、別表六の昭和三二年六月欄記載のとおりになることが認められ、以上によれば、メモ帳三冊から認められる本件計算期間中の原告梅軒の酒類の合計移出数量は、合成清酒第二級(一五度)二、九四五、五六〇合、焼酎甲類(二五度)二、八六五、六七〇合、同(二〇度)五六、九〇〇合、酒類原料用アルコール<証拠省略>によれば、そのアルコール分は、平均して九六度強と認められる。)一二五、七〇〇合となり、これらに含まれる純アルコール石数は、それぞれ四四一、八三四合、七一六、四一七合、一一、三八〇合、一二〇、六七二合と計算され、合計一、二九〇、三〇三合となる。

12  以上によれば、前記ボイラー日誌から推認される本件計算期間中に原告梅軒が酒類製造のために使用した純アルコール石数と、メモ帳三冊から認められる本件計算期間中に原告梅軒が移出した酒類に含まれる純アルコール石数とは、その数値において八、九三四合の差しかなく、きわめてよく一致しているものということができる。

八  以上五ないし七に検討したところによれば、メモ帳三冊は、雑記帳一冊との間にきわめて高い整合性を有するのみならず、他の間接的な酒類の移出数量の認定資料との間にもほとんど矛盾がなく、高い整合性を有するものということができる。

従つて、二の4に前述したところにより、メモ帳三冊によつて認められる酒類の個別的な移出事蹟を正当なものとして認容し、以下これにもとづいて本件酒税調査決定の実体的な適法性を判断することとする。

まず、メモ帳三冊によれば、本件移出表記載の酒類の個別的な移出事蹟のうち、番号36、37、39の三個を除くすべての移出事蹟は、その時期、酒類の種別および数量とも本件移出表記載のとおりに存在したものと認められる。

もつとも、四の2の(一)に前述したように、メモ帳三冊において、移出先が「富山、TOYAMA、TOYAma、TOyama、TOYA'、そのいずれか一方であることは確実であり、<証拠省略>によれば、大洋酒類と昭和酒販とは近接した場所にあり、当初前者に搬入される予定であつた不申告移出酒類の搬入先が現地において後者に変更された事例もあつたことが認められるから、右の程度の移出先の不特定性は、本件移出表記載の個別的な移出事蹟の認定の具体性に影響を及ぼすものではない、と考えられる。

そして、本件移出表番号36、37、39の三個の移出事蹟も、<証拠省略>によれば、本件移出表記載のとおりの時期、酒類の種別および数量をもつて存在していたものと認めちれる。

しかしながら、本件移出表記載の酒類の個別的な移出事蹟のすべてが原告梅軒の同時期における申告移出数量に含まれていなかつた事実に関しては、なお検討を要する。

<証拠省略>によれば、増田与重は、トラツクで富山方面(大洋酒類または昭和酒販)に運搬した酒類の移出事蹟はすべて不申告移出であり、トラツクで運搬したか貨車で運搬したかは、一回に移出した数量が一二ないし一六石程度のものであるか二八ないし三二石程度のものであるかによつて判別することができる旨検察官に供述していることが認められるが、他方<証拠省略>によれば、増田与重は、刑事裁判における証人として、トラツクで富山方面に運搬した酒類の移出事蹟はほとんどが不申告移出であるが、移出申告にかかる酒類をトラツクで富山方面に運搬したこともある旨証言していることが認められ、しかも乙第九号各証の記載自体からは、富山方面への移出事蹟のうちいずれが申告にかかるものであり、いずれが不申告分であるかを識別することができないのであるから、結局、本件移出表記載の酒類の個別的な移出事蹟のすべてが申告移出数量に含まれていない事実を増田与重の供述のみによつて認定することは困難といわなければならない。

ただ、<証拠省略>によれば、原告梅軒は、本件移出表記載の時期において酒類原料用アルコール(これは酒税法二二条九号所定の雑酒第二級(九六度)に該当する。)の移出がなされたことを全く申告していないことが認められるから、本件移出表記載の酒類原料用アルコールの個別的な移出事蹟、すなわち、本件移出表番号4、6、11、13、15、19、21、23、25、28、30、32の移出事蹟については、これを原告梅軒の申告移出数量に含まれない酒類の移出事蹟と認めて差支えない。

また、六に前述したように、原告梅軒の各月分の酒税法二二条による課税標準石数の申告は、すべて原告梅軒の法定帳簿に記載された各月分の合計移出石数と同一数量をもつてなされていたものと推認されるところ、<証拠省略>によれば、原告梅軒の法定帳簿である酒類売上帳のうち、昭和三二年一月二一日から同年五月二六日までの間における原告梅軒の合成清酒第二級の移出事蹟を記載した部分には、同期間における本件移出表記載の合成清酒第二級の移出事蹟、すなわち、本件移出表番号1、2、3、5、7の移出事蹟が全く記載されていないことが認められるから、右移出事蹟については、これを原告梅軒の申告移出数量に含まれない酒類の移出事蹟と推認して差支えない。

以上を総合すると、結局、本件移出表番号1ないし7および11、13、15、19、21、23、25、28、30、32の移出事蹟については、その移出数量のすべてが原告梅軒の同時期における申告移出数量に含まれていないことが認められるけれども、本件移出表記載のその余の移出事蹟については、これが原告梅軒の同時期における申告移出数量に含まれて、いないことを適確に認めるに足る証拠がないことに帰する。

よつて、本件酒税調査決定は、別紙酒税調査決定目録(一)記載の範囲においては実体的に適法なものとしてこれを維持すべきものであるけれども、同目録(二)記載の範囲においては実体的に不適法なものとして取消しを免れないものというべきである。

第六本件納税告知の実体的適法性について

本件納税告知は、これによつて原告梅軒に対し、昭和三四年七月二九日一二時三〇分までに酒税本税額一、八八二万三、一八〇円の金員を納付すべき義務を課する行政処分であるところ、本件納税告知のうち酒税本税額を定めた部分は、その実体的、基礎となる本件酒税調査決定に、第五に前述したとおりの実体的な違法が存するから、右違法の限度において取消しを免れないが、その余の部分には何ら実体的な違法は存しないから、これを維持すべきところ、右維持されるべき酒税本税額は、別紙酒税調査決定目録(一)記載の税額を合計した一、五二一万八、六二〇円となるから、結局本件納税告知は、酒税本税額として一、五二一万八、六二〇円を超える金額を定めた部分に限り、取消さるべきものとなる。

第七結論

以上により、原告梅軒を除くその余の原告らの請求の趣旨一の2ないし4の各訴えならびに原告らの請求の趣旨二の訴えをいずれも却下し、原告梅軒に対する本件酒税調査決定のうち別紙酒税調査決定目録(二)記載の部分および本件納税告知のうち酒税本税額一、五二一万八、六二〇円を超える金額を定めた部分を取消し、原告梅軒のその余の請求の趣旨一の1の請求を棄却し、訴訟費用については、原告梅軒を除くその余の原告らと被告との間に生じた分については、民事訴訟法八九条を適用して全部右原告らの負担とし、原告梅軒と被告との間に生じた分については、同法九二条本文、八九条により、これを五分し、その四を原告梅軒の、その余を被告の負担として、主文のとおり判決する。

(裁判官 松岡登 人見泰碩 渡辺壮)

酒税調査決定目録(一)

移出時間

酒類の種類

級別、類別または種別

アルコール分

数量(石)

税率(石当り)

税額(円)

三二年二月

合成清酒

第二級

一五度

一六・〇

一七、六〇〇

二八一、六〇〇

三二年三月

一六・〇

一七、六〇〇

二八一、六〇〇

三二年四月

一五・〇

一七、六〇〇

二六四、〇〇〇

三二年五月

雑酒

九六度

一五・〇

一一二、二五〇

一、六八三、七五〇

三二年六月

合成清酒

一五度

一六・〇

一七、六〇〇

二八一、六〇〇

三二年七月

雑酒

九六度

二六・五

一一二、二五〇

二、九七四、六二〇

三二年八月

一三・〇

一一二、二五〇

一、四五九、二五〇

三二年九月

一四・〇

一一二、二五〇

一、五七一、五〇〇

三二年一〇月

三四・一

一一二、二五〇

三、八二七、七二〇

三二年一一月

一〇・〇

一一二、二五〇

一、一二二、五〇〇

三二年一二月

一三・一

一一二、二五〇

一、四七〇、四八〇

小計

合成清酒

第二級

一五度

六三・〇

一七、六〇〇

一、一〇八、八〇〇

雑酒

九六度

一二五・七

一一二、二五〇

一四、一〇九、八二〇

合計

一五、二一八、六二〇

酒税調査決定目録(二)

移出時間

酒類の種類

級別、類別または種別

アルコール分

数量(石)

税率(石当り)

税額(円)

三二年六月

合成清酒

第二級

一五度

二八・五

一七、六〇〇

五〇一、六〇〇

三二年七月

八・八

一七、六〇〇

一五四、八八〇

三二年八月

一九・一

一七、六〇〇

三三六、一六〇

三二年九月

三二・〇

一七、六〇〇

五六三、二〇〇

三二年一〇月

二四・〇

一七、六〇〇

四二二、四〇〇

三二年一一月

一九・六

一七、六〇〇

三四四、九六〇

三二年一二月

三五・一

一七、六〇〇

六一七、七六〇

三三年五月

二九・〇

一五、八〇〇

四五八、二〇〇

三三年六月

一三・〇

一五、八〇〇

二〇五、四〇〇

合計

三、六〇四、五六〇

差押処分目録<省略>

別表一<省略>

別表二 調査移出石数(単位合)

年月

合成清酒

(第二級)

焼酎甲類

(二五度)

焼酎甲類

(二〇度)

雑酒

(第二級)

三二・二

一七五、五六〇

一七七、六四〇

三二・三

二三七、三八〇

一六七、五三〇

三二・四

一五三、四三〇

一八四、二〇〇

五、〇〇〇

一五、〇〇〇

三二・五

一五三、一二〇

一四六、四〇〇

七、〇〇〇

三二・六

一二七、八五〇

一八三、六四〇

二、五〇〇

三二・七

一四〇、一七〇

二一四、二六〇

一、八〇〇

二六、五〇〇

三二・八

一三〇、三三〇

一四四、〇〇〇

五、〇〇〇

一三、〇〇〇

三二・九

一四五、八〇〇

一二八、一〇〇

一、七〇〇

一四、〇〇〇

三二・一〇

二三一、三四〇

一七七、三一〇

三四、一〇〇

三二・一一

二三二、七五〇

二二五、二一〇

三〇〇

一〇、〇〇〇

三二・一二

三八七、九〇〇

三一一、〇〇〇

一〇、九〇〇

一三、一〇〇

三三・五

一五三、七二〇

一四二、八七〇

五、〇〇〇

三三・六

一二三、二三〇

一五八、〇〇〇

二、九〇〇

別表三、四、五<省略>

別表六 増田メモにかかる移出石数(単位合)

年月

合成清酒

(第二級)

焼酎甲類

(二五度)

焼酎甲類

(二〇度)

雑酒

(第二級)

三二・二

一七五、五六〇

一七七、六四〇

二三七、三八〇

一六七、五三〇

一五三、四三〇

一八四、二〇〇

五、〇〇〇

一五、〇〇〇

一五三、一二〇

一四六、四〇〇

七、〇〇〇

一二七、八五〇

一八三、六四〇

二、五〇〇

一四〇、一七〇

二一四、二六〇

一、八〇〇

一六、五〇〇

一三〇、三三〇

一四四、〇〇〇

五、〇〇〇

一三、〇〇〇

一四五、八〇〇

一二八、一〇〇

一、七〇〇

一四、〇〇〇

一〇

二三一、三四〇

一七七、三一〇

三四、一〇〇

一一

二三二、七五〇

二二五、二一〇

三〇〇

一〇、〇〇〇

一二

三八七、九〇〇

三一一、〇〇〇

一〇、九〇〇

一三、一〇〇

三三・一

八六、五三〇

四五、九〇〇

一七〇、六〇〇

七一四、一〇〇

一一、〇〇〇

一二三、七六〇

一四九、四一〇

八〇〇

一七二、〇九〇

一三六、一〇〇

三、〇〇〇

一五三、七二〇

一四二、八七〇

五、〇〇〇

一二三、二三〇

一五八、〇〇〇

二、九〇〇

二、九四五、五六〇

二、八六五、六七〇

五六、九〇〇

一二五、七〇〇

注 乙第九号証の一ないし三から集計した。(但し昭和三二年六月三日から同月二三日の間は乙第九号証の記載がないので乙第八号証によつた。)

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